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2010年12月 7日 (火)

知財高判平成22年10月13日平22(ネ)10052号

新しい著作権判例である。

内容は裁判所サイトの下記ページ参照。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101014105317.pdf

正当な引用(32条1項)といえるか、という点が争点となった。

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(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

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本判決は、第1に、引用先作品は非著作物でもよいとした。具体的には、本件で問題となったのは絵画鑑定書であった。

たしかに上記法文では、「引用して利用することができる」とするだけで、引用先作品が著作物であることを要件としていない。妥当な結論であろう。

第2に、「引用して利用する方法や態様」が公正な慣行に合致し、かつ、引用の目的上正当な範囲内として「社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要」とした上、引用への該当性判断は「他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮され」るべきとする。同趣旨の判例として絶対音感事件第1審の東京地判平成13年6月13日判時1757号138頁等。

旧著作権法に関する最判昭和55年3月28日民集34巻3号244頁(第一次パロディ事件)は、「引用とは、報道、批評、研究等の目的で他人の著作物の全部又は一部を自己の著作物中に採録すること」をいい、これに該当するためには、ⓐ「引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される著作物とを明瞭に区別して認識することができ」(明瞭区別性)、かつ、ⓑ「右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならない」(主従関係)とした。

その後、下級審は、この最高裁判例をベースに、さまざまな判例を言い渡してきた。詳細は拙著「著作権法」240ページ以下を参照されたい。

これに対し、今回の判例は、上記最高裁判例のフレームワークを超えるものである。同趣旨の判例として絶対音感事件第1審の東京地判平成13年6月13日判時1757号138頁等。

下級審としては、上記最高裁判例が旧著作権法に関するものであって、現行法と文言が異なっていることが、錦の御旗となるのだろう。

つまり、上記最高裁判例は旧法の法文を前提としたものにすぎず、それと規定ぶりが異なる現行法では、現行法の法文に忠実な解釈を採用してもいいというわけだ。

それはそれとして理解できないわけではない。しかし「社会通念」「合理的」「総合考慮」は基準として漠然としており、明確化が望まれるという点で、課題を残した。

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