銀行商品サイト事件(東京地判平成22年12月21日平22(ワ)12322号)その2
第3に、「データベースの著作物」としての著作物性について、次のとおり判示して、「本件図表が図形の著作物に当たるものと認めることはでき」ないとした。
「原告ウェブサイトにおいては,本件図表を構成する各図表の「変動金利」及び「固定金利」の数値を金利の低い順に並べ替えて,表示することができることからすれば,本件図表を構成する各図表に表示される情報については,何らかのデータベースが存在することがうかがわれるが,そのデータ構造についての主張立証はない。もっとも,原告は,本件図表を構成する各図表の複製物(《証拠略》)を証拠として提出しているが,上記各図表の記載事項から本件図表に係るデータベースのデータ構造そのものを把握することはできない。そうすると,原告の主張の前提となる本件図表のデータベースがいかなるものであるのか不明であるから,情報の体系的な構成によって創作性を有するものと認めることはできない。」
第1の点は、「ありふれたもの」であることを理由に創作性が認められず、著作物性を否定するという、従来の判例理論を用いたものである。詳細は岡村久道「著作権法」52頁を参照されたい。
これに対し、原告は「本件図表は,①全国の金融機関の住宅ローンを掲載していること,②住宅ローンの商品名や金利情報その他の必要事項をデータベース化していること,③データベース化された住宅ローンについて,各都道府県ごとや各地域ごとに利用できる住宅ローンと全国の住宅ローンを抽出する機能を備えていること,④その住宅ローンの金利を変動金利と固定金利に区分し,固定金利については,各固定期間である1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年に区分し,「変動金利又は固定金利の各固定期間である1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年」のうちの「利用者が希望する箇所」をクリックすることにより,その希望する箇所の金利について,順次,昇順(低金利の順)に並び替える動作機能を備えていることの特徴を有するものであり,ウェブ時代における新しい概念の「動的な図表」として創作性を有する旨主張していたる。
この点について、本判決は、「上記②ないし④の機能等は,本件図表に表示されるデータの管理方法あるいは原告ウェブサイトの機能であって,本件図表を構成する各図表そのものの表現に相当するものではなく,上記機能等から本件図表が図形の著作物としての創作性を有することを基礎づけることはできない。」「また,全国の金融機関の住宅ローン商品を対象に,それらの変動金利及び固定金利を図表の形式で表示すること(上記①)や各金融機関の住宅ローン商品を金利の低い順に昇降順に配列して表示すること(上記④)は,いずれもありふれた表現であって,表現上の創作性を認めることはできない。」としている。
第2の点も、「ありふれたもの」であることを理由に創作性を否定した点で同様であるが、特殊の著作物である「編集著作物」について、ありふれた表現の創作性を否定する先例としては、アサバン事件控訴審判決がある(岡村・前掲書102頁)。
第3の点は、データベース著作物にいうデータベースに該当するためには、明文で「論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」(2条1項10号の3)でなければならないところ、「そのデータ構造についての主張立証はない」としている。 もっとも、「何らかのデータベースが存在することがうかがわれる」ものである関係上、「原告の主張の前提となる本件図表のデータベースがいかなるものであるのか不明であるから,情報の体系的な構成によって創作性を有するものと認めることはできない。」として、慎重に創作性の問題とした。
以上のとおり、いずれの点も、従来からの判例理論に基づく常識的な判断と言えるであろう。
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銀行商品コム事件控訴審の知財高判平成23年4月19日は控訴棄却。判決全文は、http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110420155715.pdf
投稿: 岡村久道 | 2011年4月21日 (木) 07時35分