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2010年12月

2010年12月31日 (金)

今年の成果物

早いもので、もう大晦日である。

今年は、おかげさまで4冊の単行本を出版することができた。

まず、1月には、単著で「個人情報保護法の知識〈第2版〉」(日経文庫) 。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532112095/cyberlawjapan-22

何年かぶりの改訂で、その間、いろいろなことがあった。

次に、4月には、近畿大学の高橋秀和先生との共著で「情報法講義」(法律文化社)。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4589032414/cyberlawjapan-22

この本では、情報ネットワークによって表現の自由がどのように変容していったか、プライバシー権と個人情報保護法制が、どのように確立されていったかについて論じた。

おなじ4月に、「プライバシー・個人情報保護の新課題」(商事法務)。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4785717491/cyberlawjapan-22

共著本であり、私は「内部統制システムと情報セキュリティ」について論じた。この両者と、プライバシー・個人情報保護との相互関係を論じるという、アクロバットのような論文である。

そして、11月には単著で「著作権法」(商事法務)。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4785718102/cyberlawjapan-22

こちらは執筆に5年ほどかかった。
夏井高人先生のブログでも取り上げていただいた。
http://cyberlaw.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-8370.html

さて、来年も、新たな出版予定が待っている。がんばらなきゃ。

皆さまも、来年が素晴らしい年でありますように。

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2010年12月30日 (木)

裁判所サイト「判例検索システム」の課題

法律関係者なら、ほとんど誰でも知っていることだが、

「裁判所」サイト
http://www.courts.go.jp/
の中に、

「判例検索システム」
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0010?action_id=first&hanreiSrchKbn=01
が設けられており、非常に便利である。

本人に直接確認したわけではないが、私と湯島の司法研修所で同期だった某裁判官が事務総局にいたとき、その発足に尽力したと聞いている。

彼とは、修習生時代、研修所周辺の池之端文化センター、御徒町、渋谷あたりで、安酒を、よく飲んで回ったものだ。

今の修習生はたいへんなようであるが、我々のころは、のどかで、いい時代であった。

話を元に戻す。

こうした判決内容の公開は、単に法情報学的観点にとどまらず、より重大な、憲法が保障する裁判の公開を促進するものとして、大きく評価できる。

しかし、課題が幾つか残されている。

思いつくままに指摘してみたい。

第1に、判例の公開基準が明確でないことである。

もとより、すべての判例が公開されているわけではない。

だが、前述した憲法の趣旨からすれば、より多くの判列が公開されるべきであろう。

第2に、控訴審判決のあり方が、改めて浮き彫りになったことである。

控訴審判決の「原判決62頁16行目から63頁12行目までを以下のとおり改める。」式の書き方は、いつもながらの事とはいえ、どうにかならないか。

原判決が公開されていなければ、何の意味か分からない。

判例時報等の判例誌で公開されていても、頁や行数が明示されているわけではないから、やはりどの箇所か分からない。

原判決が裁判所サイトで公開されていても、そのPDFにおけるページ数等の記載と一致していなければ、徒に誤解を招くだけである。

例えば、裁判所サイトで公開されている判例の中には、当事者の記載が省略されているものもあり、その場合に、実際の判決におけるページ数や行数とズレが生じるのではないか。

その有無等に関する公開方針が公表されているわけでもないから、「大丈夫なのか」という懸念は深まるばかりである。

「原判決の第3、2、(1)の6行目から12行目までを以下のとおり改める。」とするなど、もっと工夫があってもいいのではなかろうか。

第3に、外字等の問題である。

http://www.courts.go.jp/picture/hanrei_help.html

に掲載された「各判例について」にも、「JIS第1・第2水準にない文字の大部分は,できるだけ近い文字に変換していますが,「・」で表示される場合があります。また,外字,数式,化学式等については,正確に表示されないことがあります。」として、注意が呼びかけられている。

どうしても判決のために必要なものは、事務総局からUnicode、JISへの追加を呼びかける一方、どうでもいいものなのに、単に慣例的に使われてきたにすぎないものは、思い切って廃止すべきであろう。

それでも、氏名などについてはUnicode、JISにないものが残らざるを得ない。

とかく漢字の問題は難しい。

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2010年12月28日 (火)

銀行商品サイト事件(東京地判平成22年12月21日平22(ワ)12322号)その2

 第3に、「データベースの著作物」としての著作物性について、次のとおり判示して、「本件図表が図形の著作物に当たるものと認めることはでき」ないとした。

「原告ウェブサイトにおいては,本件図表を構成する各図表の「変動金利」及び「固定金利」の数値を金利の低い順に並べ替えて,表示することができることからすれば,本件図表を構成する各図表に表示される情報については,何らかのデータベースが存在することがうかがわれるが,そのデータ構造についての主張立証はない。もっとも,原告は,本件図表を構成する各図表の複製物(《証拠略》)を証拠として提出しているが,上記各図表の記載事項から本件図表に係るデータベースのデータ構造そのものを把握することはできない。そうすると,原告の主張の前提となる本件図表のデータベースがいかなるものであるのか不明であるから,情報の体系的な構成によって創作性を有するものと認めることはできない。」

 第1の点は、「ありふれたもの」であることを理由に創作性が認められず、著作物性を否定するという、従来の判例理論を用いたものである。詳細は岡村久道「著作権法」52頁を参照されたい。

 これに対し、原告は「本件図表は,①全国の金融機関の住宅ローンを掲載していること,②住宅ローンの商品名や金利情報その他の必要事項をデータベース化していること,③データベース化された住宅ローンについて,各都道府県ごとや各地域ごとに利用できる住宅ローンと全国の住宅ローンを抽出する機能を備えていること,④その住宅ローンの金利を変動金利と固定金利に区分し,固定金利については,各固定期間である1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年に区分し,「変動金利又は固定金利の各固定期間である1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年」のうちの「利用者が希望する箇所」をクリックすることにより,その希望する箇所の金利について,順次,昇順(低金利の順)に並び替える動作機能を備えていることの特徴を有するものであり,ウェブ時代における新しい概念の「動的な図表」として創作性を有する旨主張していたる。

 この点について、本判決は、「上記②ないし④の機能等は,本件図表に表示されるデータの管理方法あるいは原告ウェブサイトの機能であって,本件図表を構成する各図表そのものの表現に相当するものではなく,上記機能等から本件図表が図形の著作物としての創作性を有することを基礎づけることはできない。」「また,全国の金融機関の住宅ローン商品を対象に,それらの変動金利及び固定金利を図表の形式で表示すること(上記①)や各金融機関の住宅ローン商品を金利の低い順に昇降順に配列して表示すること(上記④)は,いずれもありふれた表現であって,表現上の創作性を認めることはできない。」としている。

 第2の点も、「ありふれたもの」であることを理由に創作性を否定した点で同様であるが、特殊の著作物である「編集著作物」について、ありふれた表現の創作性を否定する先例としては、アサバン事件控訴審判決がある(岡村・前掲書102頁)。

 第3の点は、データベース著作物にいうデータベースに該当するためには、明文で「論文、数値、図形その他の情報の集合物であつて、それらの情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの」(2条1項10号の3)でなければならないところ、「そのデータ構造についての主張立証はない」としている。 もっとも、「何らかのデータベースが存在することがうかがわれる」ものである関係上、「原告の主張の前提となる本件図表のデータベースがいかなるものであるのか不明であるから,情報の体系的な構成によって創作性を有するものと認めることはできない。」として、慎重に創作性の問題とした。

 以上のとおり、いずれの点も、従来からの判例理論に基づく常識的な判断と言えるであろう。

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銀行商品サイト事件(東京地判平成22年12月21日平22(ワ)12322号)その1

 本件は,原告が,被告がその開設するウェブサイト「銀行商品コム」上に掲載している「住宅ローン商品金利情報」のうちの図表(被告図表)は,原告の著作物である「図表」(本件図表)を複製したものであり,被告の上記掲載行為は原告の保有する本件図表の著作権(複製権,公衆送信権)を侵害する旨主張し,被告に対し,著作権法112条1項に基づく差止請求として被告のウェブサイト上の「住宅ローン商品金利情報」が掲載されたウェブページの閉鎖と,著作権侵害の不法行為による損害賠償の一部の支払を求めた事案である。

 次の裁判所サイトで、全文を閲覧できる。
 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101222085234.pdf

 本判決は、以下のとおり、本件図表が「図形の著作物」,「編集著作物」又は「データベースの著作物」であることを認めることはできないとして、請求を棄却した。

 第1に、「図形の著作物」としての著作物性について、次のとおり判示して、「本件図表が図形の著作物に当たるものと認めることはでき」ないとした。

「本件図表は,各金融機関が提供する住宅ローン商品の金利情報について,全国又は各地域別の金融機関ごとに,その商品名,変動金利の数値,固定金利(1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年の固定期間別)の数値を表示して金利を対比した表及びそれらの金利の低い順に昇降順に並べて対比した表であり,金利情報をこのような項目に分類して対比した図表及び金利の低い順に昇降順に並べて対比した表は,他に多く存在し(《証拠略》),ありふれたものであって,思想又は感情を創作的に表現したものということはできない。」

 第2に、「編集著作物」としての著作物性についても、次のとおり判示して、「本件図表が編集著作物に当たるとの原告の主張は,理由がない」とした。

「本件図表は,各金融機関が提供する住宅ローン商品の金利情報について,全国又は各地域別の金融機関ごとに,その商品名,変動金利の数値,固定金利(1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年の固定期間別)の数値を表示して金利を対比した表及びそれらの金利の低い順に昇降順に並べて対比した表であり(前記(2)ア),全国の金融機関の全てを対象に,その提供する全ての住宅ローン商品の金利情報を素材として選択したものであり,そのような選択はありふれたものであるから,素材の選択によって創作性を認めることはできない。」
「本件図表における素材の配列は,別紙B記載のように,左から,「金融機関名(店舗情報へリンク)」,「キャンペーン商品名等(各金融機関の商品ページへリンク)」,「変動金利型年金利(%)」及び「固定金利型固定期間別年金利(%)」(1年,2年,3年,5年,7年,10年,15年,20年,25年,30年,35年の固定期間別)の順に配列したものであり,この種の住宅ローン金利の対比表に多くみられたありふれた配列であり,また,本件図表を構成する図表の中には,各地域ごとの各金融機関の住宅ローン商品を金利の低い順に昇降順に配列したものがあるが,このように金利の低い順に住宅ローン商品を配列することもありふれたものであるから,素材の配列によっても創作性を認めることはできない。」

 長くなるので、次に続く。

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2010年12月27日 (月)

私的録音録画補償金はメーカーに対する請求権か?

年も押し詰まった本日(平成22年12月27日)、東京地裁で著作権法関連の興味深い判決が言い渡された。

著作権法30条2項の私的録音録画補償金につき、メーカーの指定管理団体に対する補償金支払義務は、法的強制力を伴わない抽象的義務にとどまるとする判断を示したのだ。

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2010122700467

本件を理解するには、やや長い説明を要する。

著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とするときは、無許諾で複製することができる(30条1項柱書)。本項は、著作隣接権の対象すべてに準用されている(102条1項)。

録音録画も複製の一態様であるが、私的使用のための複製であっても、デジタル方式の私的録音録画について、政令で定める機器・記録媒体による録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金(私的録音録画補償金)を権利者に支払わなければならない(30条2項)。これを「私的録音録画補償金」といい、著作権法第5章(104条の2~104条の10)が定めている。

本制度は、機器(特定機器)や記録媒体(特定記録媒体)の購入時に、補償金が上乗せされた価格をユーザーが支払い、これを指定管理団体が当該機器・記録媒体メーカーから支払を受けて権利者に分配するという仕組みになっている。個々の権利者が個々の家庭内録音を探知してユーザーに許諾を求めさせ、又は対価を支払わせることは事実上不可能であり、個々の補償金額は少額なので回収がコスト倒れにもなるため、権利保護と公正な利用との調和を図るために採用された制度である(岡村久道「著作権法」233頁)。

指定管理団体が私的録音録画補償金の支払を請求する場合には、特定機器又は特定記録媒体の製造又は輸入を業とする者(次条第三項において「製造業者等」という。)は、当該私的録音録画補償金の支払の請求及びその受領に関し協力しなければならない(104条の5)。

本件は、DVDレコーダーメーカーである被告(東芝)が、指定管理団体のひとつである原告(社団法人私的録画補償金管理協会)に対し、私的録音録画補償金の支払を拒否したので、原告が被告に対し、その支払を求めて訴訟を提起したという事件である。

今回の訴訟で問題となったのはアナログチューナ非搭載録画機であるデジタル放送専用DVDレコーダー。「ダビング10」があるので、補償金の対象となるか、かねてから議論があった。

本判決は請求を棄却して、東芝側を勝訴させた。

その理由であるが、現時点では報道に頼るほかない。

http://japan.cnet.com/news/business/20424554/

報道によれば、アナログチューナ非搭載録画機も私的録音録画補償金の対象になるとする一方で、メーカーは協会による補償金の請求や受領に協力しなければならないと定める104条の5は、法的強制力を伴わない抽象的義務にとどまり、支払義務を負うとは認められないとする内容の判断であるようだ。

本判決によれば、アナログチューナ搭載録画機についても、メーカーは、単に訓示規定にすぎないものに基づいて、任意に協力してきたことになる。

いずれにせよ本判決の影響は大きい。

裁判所サイトに判決文がアップされたら、詳細を検討してみたい。

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2010年12月23日 (木)

CD時代の終焉?

別に格好を付けているわけではないが、私はクラシック音楽を良く聴いている。
毎週のように「のぞみ」に乗って東京・大阪間を往復しており、その間はヘッドホンを付けたままの状態である。

もちろん、携帯型の小型再生装置(具体的な商品名は伏せておこう)で音楽を聴いているわけである。これによって、同一車両内のどこかで耳障りに響く、行儀の悪い他の乗客の携帯着メロや、赤ん坊の泣き声などが、しばしの間、シャットダウンできる。

そのための音源として、大手CD販売サイトから、毎月のようにCDを大量購入して、せっせと小型再生装置に入れている。音楽CDを、いわゆる「大人買い」していることになる。

今日のような休日には、ヘッドホンをかぶった状態で、締め切りに追われて原稿を執筆している。

ところが、このところ、クラシックCDの世界に異変が起こっている。
どんどん単価が下がっているのだ。

例えば「ドイツ・グラモフォン111周年記念コレクターズ・エディション2」は、CD56枚で、10,332 円。
1枚あたりの単価に直せば185円となる。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3903405

そんなに安価であっても、超豪華なピアニスト、指揮者、オーケストラが並んでいる。

著作隣接権切れのモノラルも数枚だけ混じっているが、それ以外はれっきとしたステレオ。2008年1月録音のものさえ入っている。

ちなみに、クラシックという名称のとおり、作曲家の著作権は、そのほとんどが保護期間切れで消滅している。

同様に、CD60枚の「VIVARTE BOX」も11,990 円だから、こちらも1枚あたりの単価が200円を割っている。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3957045

さらに激安は、英ロイヤル・フィルの『グレート・クラシカル・マスターワークス』。
こちらはCD30枚組で3,080円だから、1枚あたりの単価は約100円。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3919872

これに含まれているのは、駅でワゴン販売していた低価格CDが多いが、1990年代後半の録音、つまりデジタルが中心である。
よく売れているようで、このたび、同一価格帯の「続編」まで発売となった。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3964119

まるで海賊版と間違えるような価格だが、すべて正規盤。すでに入手しているものについては、新譜で発売されたころに、2、3千円を出して購入した昔がうらましい。

ただし輸入盤であり、国内CDが高いことと好対照である。

それはともかく、この輸入盤の激安傾向、消費者として安売りは結構なことだが、この価格で製作・流通コストを回収できるのか。

それに、最近の若い人たちはダウンロード販売で購入することが主流であり、CD購入者は、私のような中年が中心のようだ。

こうして、いろいろ考えていると、所詮「人ごと」ながら、CD時代の終焉ではないかと、要らぬ心配をするのは、私だけなのだろうか。

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2010年12月21日 (火)

権利制限の一般規定に関する報告書

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会
権利制限の一般規定に関する報告書

が公表されている。

http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/bunkakai/32/pdf/shiryo_3_2.pdf

こういっては何だが、「そんな規定は導入したくない」が、「平成20年3月に知的財産戦略本部に設置された「デジタル・ネット時代における知財制度専門調査会」において検討が行われ、そこでは、「権利者の利益を不当に害しないと認められる一定の範囲内で、公正な利用を包括的に許容し得る権利制限の一般規定(日本版フェアユース規定)を導入することが適当」とする報告書(以下、「専門調査会報告書」という。)が公表された(平成20年11月27日)」ので「仕方なく報告書を作った」という色彩が感じられるのは、私だけだろうか。

著作権への配慮ゆえに、アップルの後塵を拝したウォークマンのような悲劇が起こらなければいいのだが。それでなくても時代の流れは速いのだから、遅々として進まない立法では、流れに取り残されないか、心配だ。

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2010年12月15日 (水)

文化庁が著作権法改正に向けた意見募集実施-技術的保護手段

文化庁が「技術的保護手段に関する中間まとめ」に対する意見募集を実施している。

http://www.bunka.go.jp/oshirase_kaigi/2010/chosaku_hosei_101214.html

概要によれば、「ファイル共有ソフト等により著作物の違法利用が常態化する一方、違法利用全体の捕捉、摘発が現実的に困難な中、著作物等の保護技術は、権利保護のため必要不可欠」という観点から、「保護技術について「技術」のみに着目する現行法の考え方(例えば、暗号型の保護技術は、視聴等の支分権の対象外となる行為を制限する技術として技術的保護手段には該当しないと整理)を改め、ライセンス契約等の実態も含めて、当該技術が社会的にどのような機能を果たしているのかという観点から再評価すべき」というものである。

いつもながら、たいへん分かりにくい。

簡単に言うと、これまでコピーコントロール技術の回避行為だけを、著作権法によって規制してきたが、今後はアクセスコントロールについても、同様に回避行為を著作権法によって規制しようとするものだ。

この点は、拙著「著作権法」でも触れていたが、技術の構成と効果とを過度に区別したことが、これまでの混乱を招いていたものと言えよう。

ただ、不正競争防止法との棲み分けを、どうするつもりなのだろうか。

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2010年12月13日 (月)

クラウドコンピューティングと法律

最近は、クラウドコンピューティングについて、法制度との関係が話題になることが多くなってきました。

次のものは、ちょうど1年ほど前、私が情報通信ジャーナル2009年12月号に執筆した論考です。

「200912.pdf」をダウンロード

ご覧ください。

これは総務省「自治体クラウド推進本部 有識者懇談会(第2回)」の「自治体へのクラウドの全国的導入に係る論点」2頁目に要約されています。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000090267.pdf

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2010年12月12日 (日)

法律論文等での条文に関する表記方法

法科大学院の学生たちが書いてくるものには、法律論文等での条文に関する表記方法について、どうも迷いがあるようだ。

これは法律論文だけでなく、訴状、準備書面、判決等を各場合に、法曹として一生使うことになるので、良く覚えておいてもらいたい。

まず、特定の法令に関する論文であることが明確な場合は、「著作権法」のような法令名をいちいち書く必要はない。例えば著作権判例百選の解説文のような場合である。

ただし、上記明確性がある場合でも他の法律の条文も入ってくる場合や、まして上記明確性がない場合には、区分しておくことを要する。

しかし、その場合でも、いちいち各条文に「A法」と書くことは、読んでいてうるさいだけでなく、徒にスペースと時間を費やすことにもなる。

したがって、続けて同一の法律の場合には「同法」とし、他の法律(B法)が入ってきたときは、その名称(B法)を冠する。さらにB法が続いて登場すれば、「同法」と表記する。

同様の理由で、直前の引用条文と条が同一なら「同条」、項が同一なら「同項」とするのが普通である。号の場合も同様。

次に、「第 条」「第 項」等の「第」は原則として記載不要。もっとも、「第」を付けたからといって間違いとなることはない。現に、霞ヶ関の中央省庁が作る行政文書の場合には、通常、条項号にそれぞれ「第」を付けている。

「第」を付けない場合でも、その例外として「23条の2第1項」のように、枝番がつく場合には、その直後に項を並べる部分に限って「第」を付ける。付けなければ「23条の21項」となって、別の意味になるからである。項や号に枝番がつく場合も同様の扱いとなる。

学生の中には、「法」と冠する人もいる。

これは「規則」を示す「規」、「政令」を示す「令」と区別するために冠されることが通常である。それ以外の場合には、「法」を付けると、実務等では奇異な印象を与えるので、使わない方がいい。

以上は、論文を書く上での慣習法のようなものである。クルマのハンドルを握る場合の交通ルールのようなものだ。

こうした形式的な箇所で迷わないように、しっかり覚えておいてもらいたいものだ。

2011.1.14追記-関連項目

法律論文における出典の表記方法

http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/01/post-1a26.html

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2010年12月 9日 (木)

インターネット消費者取引研究会

本日は、溜池山王にある消費者庁に行ってきた。

「インターネット消費者取引研究会」に出席するためである。

課題は山盛りである。

http://www.caa.go.jp/adjustments/index_6.html
に各回の添付資料がアップされているので、興味がある人は見ておいて欲しい。

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2010年12月 7日 (火)

知財高判平成22年10月13日平22(ネ)10052号

新しい著作権判例である。

内容は裁判所サイトの下記ページ参照。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20101014105317.pdf

正当な引用(32条1項)といえるか、という点が争点となった。

------------------

(引用)
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
2 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

------------------

本判決は、第1に、引用先作品は非著作物でもよいとした。具体的には、本件で問題となったのは絵画鑑定書であった。

たしかに上記法文では、「引用して利用することができる」とするだけで、引用先作品が著作物であることを要件としていない。妥当な結論であろう。

第2に、「引用して利用する方法や態様」が公正な慣行に合致し、かつ、引用の目的上正当な範囲内として「社会通念に照らして合理的な範囲内のものであることが必要」とした上、引用への該当性判断は「他人の著作物を利用する側の利用の目的のほか、その方法や態様、利用される著作物の種類や性質、当該著作物の著作権者に及ぼす影響の有無・程度などが総合考慮され」るべきとする。同趣旨の判例として絶対音感事件第1審の東京地判平成13年6月13日判時1757号138頁等。

旧著作権法に関する最判昭和55年3月28日民集34巻3号244頁(第一次パロディ事件)は、「引用とは、報道、批評、研究等の目的で他人の著作物の全部又は一部を自己の著作物中に採録すること」をいい、これに該当するためには、ⓐ「引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される著作物とを明瞭に区別して認識することができ」(明瞭区別性)、かつ、ⓑ「右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならない」(主従関係)とした。

その後、下級審は、この最高裁判例をベースに、さまざまな判例を言い渡してきた。詳細は拙著「著作権法」240ページ以下を参照されたい。

これに対し、今回の判例は、上記最高裁判例のフレームワークを超えるものである。同趣旨の判例として絶対音感事件第1審の東京地判平成13年6月13日判時1757号138頁等。

下級審としては、上記最高裁判例が旧著作権法に関するものであって、現行法と文言が異なっていることが、錦の御旗となるのだろう。

つまり、上記最高裁判例は旧法の法文を前提としたものにすぎず、それと規定ぶりが異なる現行法では、現行法の法文に忠実な解釈を採用してもいいというわけだ。

それはそれとして理解できないわけではない。しかし「社会通念」「合理的」「総合考慮」は基準として漠然としており、明確化が望まれるという点で、課題を残した。

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2010年12月 1日 (水)

メール送信行為を名誉毀損の「公然」に該当するとした事例

興味深い判例を紹介する。

東京高判平成22年 1月20日公刊物未登載 20(ワ)16947

この判例は、次のように説いて、メール送信行為が名誉毀損の「公然」に該当するとした。

「名誉毀損による不法行為が成立するためには,公然と事実を摘示又は意見ないし論評を表明することにより他人の名誉を毀損することが必要であると解されるところ,事実の摘示又は意見ないし論評の表明が公然とされたといえるためには,不特定若しくは多数の人に対し事実の摘示若しくは意見ないし論評の表明がされたこと,又は,特定かつ少数の人に対し事実の摘示若しくは意見ないし論評の表明がされた場合であって,不特定又は多数の人に対する伝播可能性が認められることを要するものと解するのが相当である。そして,特定かつ少数の人に対し電子メールの送信により名誉毀損文書が送信された場合には,当該文書の性質及び内容並びに送信の相手方等の具体的事情を総合考慮して伝播可能性の有無を判断すべきである。」

いわゆる「伝搬性の理論」(Theory of propagation )である。

「被告Y2による本件各文書の電子メール送信は,特定かつ少数の人に対するものであるが,不特定又は多数の人に対する伝播可能性が認められ,公然とされたものというべきである。」

さて、問題は、本件でメール送信が伝搬性を有すると認定したプロセスである。

この判決は、次のように判示する。

「これを本件についてみると,……関係者であれば,重大な関心を寄せるものであることは明らかであって,……関係者がこのような文書を入手すれば,特段の事情がない限り,……他の関係者に伝わる可能性が十分に認められる……。そして,被告Y2は,このような内容の……本件各文書を,……関係者……に対し,電子メールで送信したものであり,しかも,Eに対しては口止めさえしていなかった……。そうすると,少なくともEから,本件各文書が不特定多数の第三者に伝わる可能性は十分にあったというほかはなく,……現実に,Eは,被告Y2から送信を受けた本件各文書を原告X4及び原告X6に送信し,その後不特定多数の第三者に伝わったことが認められる」。

メールだからといって、伝搬性を考慮すると、「公然」に該当すると言える場合があるとしたことに注意すべきだろう。

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