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2011年1月31日 (月)

著作権法115条の読み方

先般、このブログに「著作権法116条の読み方」
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/01/116-45d2.html
をアップしたところ、予想外のアクセス数があったので驚いた。

おそらく、「116条(著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置)の読み方が分からない」と悩んでいる人は、学生であれ、企業法務であれ、こちらで考えていた以上に多かったようだ。

さらに、116条1項にいう「前条」、つまり115条の読み方が分からないとして、直接、115条の解説を依頼する声も複数いただいた。

まず、115条は、次のような条文である。条文の部分はフォントの色を変更している。

(名誉回復等の措置)
第115条 著作者又は実演家は、故意又は過失によりその著作者人格権又は実演家人格権を侵害した者に対し、損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに、著作者又は実演家であることを確保し、又は訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる。

これを名誉回復等措置請求権という。

著作者人格権・実演家人格権の侵害によって生じた損害は、その性格上、本来金銭賠償により償いきれるものではない。そこで、一種の原状回復的な措置として本条を置いた。これが本条の制度趣旨である。

人格権侵害に対する差止請求は、一般に、単に「侵害行為を禁止することができる」だけなのだが、本条の要件を満たせば、「著作者又は実演家であることを確保し、又は訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置」を請求しうるので、実務的に見れば、その限度で救済手段が実質的に拡張されていることになる。

要件事実をいちいち書く時間がないので、岡村久道『著作権法』から引用しておく。同書513頁に掲載した図である(無断転載を禁止する)。

211

この中で、「⑤故意・過失」が要件となっている。したがって、差止請求のように無過失で認められるものではない。注意してほしい。

本条で認められるのは、通説によれば、次の2つの措置である。これらのどちらかに該当することが、本条の要件でもある。

a.「著作者又は実演家であることを確保……するために適当な措置」

b.「訂正その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置」

これに対し、東京地判平成21年5月28日平19(ワ)23883号(駒込大観音事件)は次の3分類を提唱する。

a.「著作者又は実演家であることを確保……するために適当な措置」

b.「訂正……するために適当な措置」

c.「その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置」

いずれにしても、それぞれを見ただけでは何のことか理解が困難であるが、a.は著作者人格権・実演家が氏名表示権を侵害された場合を念頭に置いている。

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さて、本条に関し、他に整理すべき点を掲げておく。

例によって、設問の末尾に掲げている「本書」の頁数は、私の本の頁数であるから、持っている人はご覧いただきたい。

・ 本条と民法723条とは、どのような関係に立つか(本書511頁)。

・ 「損害の賠償に代えて、又は損害の賠償とともに」と明記されていることとの関係で、本条の措置請求は、損害賠償が可能な場合に限られるか(本書512頁)。

・ 「名誉若しくは声望」とは何か(本書514頁)。

・ 上記b.「訂正……するために適当な措置」として原状回復を請求することはできるか(本書512頁)

・ 「適当な措置」は、謝罪広告に限られるか、それとも他にどんな手段が可能か(本書514頁)。

・ 謝罪広告等が認められるための要件は(本書515頁)。

・ ホームページ上への謝罪広告掲載を認容した判例はあるのか(本書515頁)。

・ 認容判決の執行方法として何ができるか(本書516頁)。

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参考-「著作権法116条の読み方」
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/01/116-45d2.html

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