お気に入りのシベリウス交響曲7番
1926年生まれのジョン・コルトレーンが死んだのは1967年のこと。
セロニアス・モンクはコルトレーンよりも早い1917年生まれで、1940年代初めから活動を開始して、1982年に亡くなった。ちなみにマイルス・デイヴィスは 1926年生まれ。ビル・エヴァンスも1929年生まれだ。
これに対し、フィンランドの作曲家・シベリウスは19世紀の1865年生まれだが、1957年まで生きて91歳で亡くなっている。
とすれば、コルトレーンやモンクなどと同世代とはいえなくても、生きた時代が、ずいぶん重なっていることが分かる。
つまり、シベリウスが生存中の時代に、すでにジャズが隆盛期を迎えていた。1954年末には、レコーディング中にマイルスとモンクが有名な大喧嘩をして袂を分かっている。シベリウスが、そんなニュースに接したか、接したとしても興味を持ったかどうかは分からないが。
しかし、シベリウスの作品といえば、ラヴェルと違って、ジャズの影響は見られない。というのも、1925年に発表した交響詩「タピオラ」を最後に、作品が発表されていないからだ。これを後世の人々は「謎の沈黙」などと呼んでいる。真相は、第8交響曲を書き直し続けたが自分で気に入らなかったので、とうとう発表することなく人生を終えたということらしい。
それはともかく、シベリウスが初期に後期ロマン派風の作品を書いていることも、なんとなく、かなり前の世代の人であると、誤解される原因になっているのだろうか。
そのシベリウスだが、感覚的に自分と合うのか、少なからぬCDを購入して現在に至っている。
中でもお気に入りは、最後の交響曲である7番。
それにしても最初に聞いたものが強烈すぎた。約30年前に購入したムラヴィンスキー、レニングラード・フィルによる1965年のモスクワ音楽院大ホールでのライヴである。当時はCDではなくLPだった。
ムラヴィンスキー、レニングラード・フィルのコンビによる同一曲演奏には「1977年東京ライヴ」もあり、それも聴いてみたが、このコンビの持ち味である凝縮性は、「1965年モスクワライヴ」の方が、優れていると思う。但し、録音のせいかもしれないが。。。
この7番は、交響曲といっても単一楽章のもの。ゆったりとしているが厳粛な序章に続いて、トロンボーンによる第1主題が登場。まるでフィヨルドの絶壁に打ち寄せる波のように広がる。弦によって示される強く逆巻く寒風(ひとつ間違えると蠅が飛んでいるような音を出す指揮者が居るが)、厚く立ちこめる雲間から時折のぞく日差し。
ムラヴィンスキーの演奏をゲテモノと言うなかれ。本当に最後まで心地よい緊張感を持続する。この演奏に出会わなければ、おそらくこの曲の良さが分からなかったはずだ。
セルゲースタム/ヘルシンキフィル等のお国ものから、渡邊暁雄/ヘルシンキフィル、バーンスタイン/ウイーンフィル、マゼール/ウイーンフィル、ロジェストヴィンスキー/モスクワ国立、アンソニー・コリンズ/ロンドン交響楽団に至るまで聴いたが、どうもムラヴィンスキー「1965年モスクワライヴ」ほどしっくりいかない。
というわけで、この「1965年モスクワライヴ」は現在でも愛聴版である。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1913533
に含まれていて今でも入手できる。
シベリウス好きの方は、ぜひ一度聴いてみてほしい。
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