ネット通販と景品表示法の二重価格表示規制
インターネットの共同購入サイトが注目を浴びている。
いい意味ばかりで注目されるのならいいのだが、消費者問題で報道されるものも発生している。ネット注文の「おせち」が、騒動になっているのだ。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/topics/481321/
上記報道によれば、税込みの「定価」が2万1千円の商品を「半額クーポン」を発行したという形式を取り、1万500円で500セット販売したところ、内容がスカスカである上、衛生管理上の問題が指摘され、横浜市保健所が提供元に立ち入り調査したというのだ。
だが、問題はそれだけでは終わっていない。上記記事によれば、消費者担当相が、景品表示法違反の有無を問題視しているからだ。
今回の「おせち」は購入しておらず、当時のサイトの掲載内容の詳細も知らないので、どうなのか分からない。
しかし、どうもネット通販で「通常価格のXX%割引」などと表示して、「景品表示法違反となるのでは」と疑わざるをえないものを、よく見かけるので、景品表示法の関連部分について、簡単に説明しておきたい。
景品表示法は、事業者の販売価格について一般消費者に実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく有利であると誤認される表示を、同法4条1項2号にいう不当表示として規制している。
これに基づき公正取引委員会「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」
http://www.caa.go.jp/representation/pdf/100121premiums_35.pdf
が、二重価格表示について、次のとおり基本的な考え方を明らかにしている。
過去の販売価格等を比較対照価格とする二重価格表示については、「同一の商品について最近相当期間にわたって販売されていた価格とはいえない価格を比較対照価格に用いるときは,当該価格がいつの時点でどの程度の期間販売されていた価格であるか等その内容を正確に表示しない限り,一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与え,不当表示に該当するおそれがある。」とする考え方である。
そして「比較対照価格が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」に当たるか否かは,当該価格で販売されていた時期及び期間,対象となっている商品の一般的価格変動の状況,当該店舗における販売形態等を考慮しつつ,個々の事案ごとに検討されることとなるが,一般的には,二重価格表示を行う最近時(最近時については,セール開始時点からさかのぼる八週間について検討されるものとするが,当該商品が販売されていた期間が八週間未満の場合には,当該期間について検討されるものとする。)において,当該価格で販売されていた期間が当該商品が販売されていた期間の過半を占めているときには,「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とみてよいものと考えられる。ただし,前記の要件を満たす場合であっても,当該価格で販売されていた期間が通算して二週間未満の場合,又は当該価格で販売された最後の日から二週間以上経過している場合においては,「最近相当期間にわたって販売されていた価格」とはいえないものと考えられる。」とするものだ。
これによれば、「販売実績の全くない商品又はセール直前に販売が開始された商品等,短期間しか販売した実績のない商品の価格を,「当店通常価格」等最近相当期間にわたって販売されていた価格であるとの印象を与えるような名称を付して比較対照価格に用いること。」は、「不当表示に該当するおそれのある表示」であるとされている。
このようにみると、ネット通販には、かなり問題があるものがあるのではないか。
事柄が消費者問題であるだけに、しっかりと法令遵守で販売してもらいたいものだ。
ちなみに、ネット上で、「定価」として表示したものと比較対照価格として実際の販売価格と併記する二重価格表示が、実際に違反に問われたケースとして、平成13年(排)第1号公取委平成13.2.28排除命令がある。
上記命令は公正取引委員会サイトで次のとおり閲覧できる。
http://snk.jftc.go.jp/JDSWeb/jds/dc/DC004.do?pager.offset=0
である。
参考にして欲しい。
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