個人信用情報開示の求めが問題となった事例
次の記事が出ている。
http://www.asahi.com/national/update/0122/TKY201101220289.html
この記事によれば、東証一部上場企業である警備会社が、不祥事が相次いだのかどうかは知らないが、トラブル予防などを理由として、全従業員(約2万人)に自己の個人信用情報について提出させようとしたようだ。
同一企業の従業員から大量の開示の求めを受けたため、不審に思った信用情報機関側から「目的外利用」ではないかと止められたらしい。
たしかに警備の仕事だけに、借金苦の従業員が居るようでは不安なのも分かる。
しかし、そのための手段として、個人情報保護法25条の「開示の求め」を使ったのは、どうにも腑に落ちない。
この制度は、本人が、自己のどのような情報が事業者に保有されているのかを確認し、それによって、同姓同名の破産者と取り間違えられているなど、内容が事実に反することが判明すれば、さらに訂正等を求めることなど(同法26条以下参照)を可能にするための制度だ。
個人信用情報にしても、適正な与信と多重債務発生防止のために利用されるものとして位置付けられている。
いずれにせよ、身辺調査のための「証明書代わり」を目的とするものなどではない。
このような事が認められるなら、東証一部上場から零細企業まで、各企業は就職採用時や昇進時に、各従業員に対し、「個人信用情報の開示を受けて、それを提出せよ」と号令を掛けることができることになってしまう。
「任意提出のつもりだった」などと言っても、納得できるか疑わしい。
今回のやり方は、マスメディアから批判されても仕方があるまい。
東証一部上場企業である以上、どこかの弁護士に事前相談したはずだが、どうして顧問弁護士は止めようとしなかったのか、疑問は広がるばかりである。
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