無断転載パクリブログ事件の顛末
今日は日曜なので、少し柔らかめの記事を書くことにする。
さて、いろんなところで話題になっている上記事件。
簡単に顛末をまとめておきたい。
パクリ被害を受けたのは「Webクリエイターボックス」サイト。
掲載していたコンテンツが、丸ごと無断デッドコピーされて別サイト(ブログ)に掲載された。
パクリ主は、こうして他のブログからパクったコンテンツを数多く並べて、自己のブログを運営していたようだ。したがって、被害者は、別途、多数にのぼるという。とんでもないブログである。
しかも、今回のコンテンツについて、パクリ主は、無断掲載する際、元サイトの画像を直リンクでパクリブログに表示させていた。
おそらくHTMLを丸ごとコピーしてパクったことから、こうなったのだろう。
ここまでは「良くある話」なのかもしれない。
だが、ここからが面白い。
被害を受けた「Webクリエイターボックス」サイト側は、意外な方法で反撃に転じた。
画像の直リンクを逆手にとって、自分のサイト内にある元画像ファイルを、別の新画像に差し替えたのである。
差し替えられた新画像には、汚物のイラストとともに、パクリ主が掲載した問題の記事が「無断転載」である旨が、書かれた内容のものだった。
直リンクの結果、パクリ主のブログには、ファイル名は同一であっても内容が差し替えられた新画像が表示され、汚物のイラストや「無断転載」である旨が表示されてしまった。
一種の自力救済のようなものだが、何とも興味深い。
一連の騒ぎがネット上で話題となって祭り状態となり、遂に、パクリ主ブログは閉鎖に追い込まれた。
少し堅い話をすると、まったくのデッドコピーであれば、パクられた記事が著作物に該当する場合には、それを今回のようにパクる行為は複製権侵害、公衆送信権侵害に該当しうる。
これに対し、無断転載する際に、パクリ主が改編を加えて、新たな創作性が付け加えられていれば、複製権ではなく翻案権の侵害。
誰が作ったコンテンツなのか、名前をパクリ主のものにしておれば、著作者に対する氏名表示権侵害にも該当する。何らかの改変があれば、同一性保持権侵害が成立することになる。
以上は著作権法のイロハである。江差追分事件最高裁判決や、あんどん事件京都地裁判決を参照していただきたい。
どちらの場合も、元の著作物に「依拠」していることが必要だが、直リンクが残っていれば「動かぬ証拠」となろう。それに、HTMLソースを比較すれば「依拠」の事実は簡単に証明できるはずである。
もっとも、こうした立証方法は、我々には当たり前であっても、既存の教科書には書かれていないのが普通である。
どちらにしても、著作権法以前に、今回のようなパクりは物書きとして恥じるべきことだ。
事件の顛末は「Webクリエイターボックス」サイトの下記ページにまとめられているので、興味があればご覧いただきたい。
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コメント
どういう場合に複製権侵害、翻案権侵害、はたまた同一性保持権侵害となるのか、岡村が出した「著作権法」の教科書の、どの部分に書いてあるのか、このウェブページを見た知り合いから、さっそくメールが飛んできた。
私の教科書の456ページに、図入りで掲載しているので、持っている人は参照してほしい。さらに詳しい説明は、203ページ、318ページのあたりでも図入りで説明している。
なお、依拠性の立証方法については462ページ以下で解説している。
投稿: 岡村久道 | 2011年1月16日 (日) 15時19分