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2011年2月12日 (土)

廃墟写真集事件判決-東京地判平成22年12月21日平21(ワ)451号-その1

 昨年の暮れに言い渡された東京地判平成22年12月21日平21(ワ)451号(廃墟写真集事件)は、写真の著作物に関する翻案権等の侵害が主要争点となった事例である。

事案の概要

 本判決によると、事案の概要は次のとおりである。

 本件は、原告が、原告が撮影した「廃墟」を被写体とする写真(いわゆる「廃墟写真」)と同一の被写体を、被告において撮影して写真を作成し、それらの写真を掲載した別紙書籍目録1ないし4記載の各書籍(以下「被告各書籍」といい、それぞれの書籍を「被告書籍1」、「被告書籍2」などという。)を出版及び頒布した行為が、原告の有する写真の著作物の著作権(翻案権、原著作物の著作権者としての複製権、譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害し、また、被告が「廃墟写真」という写真ジャンルの先駆者である原告の名誉を毀損したなどと主張して、被告に対し、①著作権法112条1項、2項に基づく被告各書籍の増製及び頒布の差止め並びに一部廃棄、②著作権侵害、著作者人格権侵害、名誉毀損及び法的保護に値する利益の侵害の不法行為による損害賠償、③著作権法115条及び民法723条に基づく名誉回復等の措置としての謝罪広告を求めた事案である。

判 旨

 本件で問題となった写真は合計5枚であったようであるが、次の理由を述べて、本判決は請求をすべて棄却した。

 著作物の翻案(著作権法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
 そして、著作権法は、思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照)、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分や表現上の創作性がない部分は、ここにいう既存の著作物の表現上の本質的な特徴には当たらないというべきである。

 本件において、原告は、「廃墟写真」の写真ジャンルにおいては被写体である「廃墟」の選定が重要な意味を持ち、原告写真1ないし5の表現上の本質的な特徴は被写体及び構図の選択にある旨主張しているので、被告写真1ないし5の作成がこれに対応する原告写真1ないし5の翻案に当たるか否かを判断するに当たっては、原告が主張する原告写真1ないし5における被写体及び構図の選択における本質的特徴部分が上記のような表現上の本質的な特徴に当たるかどうか、被告写真1ないし5において当該表現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要がある。

 以上の一般論を前提に、本判決は、本件で侵害の成否が問題となった被告の各写真と原告の各写真とを比較して、その共通点と異なる点を検討した上、それらの写真すべてについて、写真全体から受ける印象が大きく異なることを理由に、被告の各写真から原告の各写真の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないとして、複製権・翻案権の侵害を認めなかった。

 さらに、本件では、名誉毀損の不法行為の成否等も争点となったが、それらについても裁判所は認めなかった。

 次回の日記では、簡単な評釈を掲載する予定である。

判決文-裁判所サイト

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110106124424.pdf

追記-参考

廃墟写真集事件判決-東京地判平成22年12月21日平21(ワ)451号-その2

http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/22122121451-3e0.html

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