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2011年2月 7日 (月)

著作権法平成23年(2011年)改正の行方-権利制限の一般規定(日本版フェアユース)の導入

文化審議会著作権分科会(第33回)資料「文化審議会著作権分科会 報告書(案)」によれば、ようやく日本版フェアユースが導入される方向となった。

早ければ平成23年(2011)改正での導入を目指しているようだ。

権利制限の一般規定のことであり、一定の包括的な考慮要件を定めた上で、権利制限に該当するかどうかは裁判所の判断に委ねるという方式の権利制限規定(権利制限の一般規定)である。

新たな権利制限が求められている利用形態について、その都度必要性等について審議し、関係者間の合意が得られ次第、個別規定を改正・創設する方法が採用されてきた。

しかし、この方法では、技術の急速な進歩等に伴い生じる新たな利用形態に対して、立法措置に時間がかかる上、利用者や新規ビジネスへの萎縮効果がある一方、個別規定は、厳格に解釈すべきであると一般に理解されており、民法上の一般規定に解決を委ねるよりも、著作権に特化した権利制限の一般規定を導入する方が、規律の明確化を図ることができると考えられたのである。

権利者側の負担増により実質的公平性を欠く等の指摘については、権利制限の一般規定の要件や趣旨等を明確にすることや、十分な周知を図ることにより、ある程度解消することが可能であるとされた。

そこで、権利者の利益を不当に害さず、社会通念上、権利者も権利侵害を主張しないであろうと考えられる著作物の利用であっても、企業をはじめとして法令遵守が強く求められている現代社会においては、利用者が権利侵害となる可能性を認識し、利用を躊躇する場合もあると考えられ、権利制限の一般規定の導入によりかかる萎縮効果が一定程度解消されることが期待できる。

具体的には、次のAからCの類型の利用行為を、権利制限の一般規定による権利制限の対象と位置付けることが適当であるとされている。

A.著作物の付随的な利用

その著作物の利用を主たる目的としない他の行為に伴い付随的に生ずる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的または量的に社会通念上軽微であると評価できるもの

B.適法利用の過程における著作物の利用

適法な著作物の利用を達成しようとする過程において合理的に必要と認められる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの

C.著作物の表現を享受しない利用

著作物の種類及び用途並びにその利用の目的及び態様に照らして、当該著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受(見る、聞く等)するための利用とは評価されない利用

さらに、次のような留保条件が付いている。

AからCの類型の利用行為であっても、権利者の利益を不当に害する可能性が否定できないため、社会通念上著作権者の利益を不当に害しない利用であることを追加の要件とする等の方策を講ずることが必要。

さらに、A~C及び上記のいずれにも該当しない利用については、権利制限の必要性を慎重に検討した上で、必要に応じ個別規定の改正・創設により対応することが適当。

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とはいえ、まだ残された課題は多い。具体的には、次のような点である。

権利制限の対象とする支分権及び著作物の種類

著作者人格権との関係

既存の個別規定等との関係

強行法規性

刑事罰との関係

実効性・公平性担保のための環境整備

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中古ソフト事件で最高裁は、それまでの通説である限定列挙説を排し、制限規定を実質的に例示列挙扱いしたといってよい。

しかし、新たに権利制限の一般規定(日本版フェアユース)が導入されることによって、今後はより広く、個別規定以外にも制限が認められることが明確となる。

こうして中山先生が御苦労された成果が、ようやく実を結ぼうとしている。

まだ上記のような課題はあるが、導入が進むように祈るものである。

参考-文化審議会著作権分科会(第33回)資料「文化審議会著作権分科会 報告書(案)」
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/bunkakai/33/pdf/shiryo_4_2.pdf

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コメント

今から日本の著作権法の限定規定とドイツの限定制度比べたいので岡村先生の概観は至って益のある ・ありがとうございました!
また残された課題についてもっと知りたいなら何を読めばいいかなcoldsweats01 

投稿: Ines | 2011年2月17日 (木) 21時45分

Germanyからようこそ。
日本語、上手ですね。

日本の文化庁が公表している資料として

「文化審議会著作権分科会 報告書」の最終バージョンがアップロードされました。
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/pdf/shingi_hokokusho_2301_ver02.pdf

以前の検討段階のものとして

「著作物の流通・契約システムの調査研究『著作権制度における権利制限規定に関する調査研究』報告書」(平成21年3月)
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/pdf/houkokusho_090601.pdf

があります。

投稿: 岡村久道 | 2011年2月18日 (金) 16時57分

平成23年8月にIT戦略本部が公表した「情報通信技術利活用のための規制・制度改革に係る対処方針」の中で、「文部科学省は、今後の著作権制度の検討においては、権利者の経済的利益を不当に侵害しない範囲において、情報通信分野におけるイノベーションを阻害しないような権利制限規定を設けるべきか否かについて検討を行う。また、検討を行う際には、権利者や有識者のみならず情報通信分野でどのようなサービスが提供されているか、将来どのようなサービスが提供されうるかについて十分な知見を持つ者を含めて今後とも精力的な検討を行う。」ものとされた。
下記を参照されたい。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pdf/110803_taisyo.pdf

投稿: 岡村久道 | 2011年12月21日 (水) 12時10分

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