米連邦取引委員会(FTC)-“Do Not Track”
“Do Not Track”とは「追いかけるな」という意味である。
といっても、ストーカー問題ではない。地方の国道沿いにあるドライブインで時折見かける「トラックの駐車場乗り入れお断り」という看板でもない。
オンライン追跡拒否という意味である。FTCがすでに迷惑電話勧誘対策に実施している「Do Not Call(電話勧誘拒否登録)」のネット版だと考えればわかりやすい。我が国では、ライフログを用いた行動ターゲティング広告の問題として議論されている。
米連邦取引委員会(FTC)は、2010年12月1日、プライバシー問題レポートで新たな政策の枠組みの提案を公表した。オンライン追跡について、消費者の選択を容易にすることを支持するというものである。その中で“Do Not Track”と謳われている。
レポートを詳しく読む時間がないので正確性は保証しかねるが、どうやら次の趣旨のことらしい。
まず、レポートは、これまで、企業ではプライバシーポリシーが用いられてきたが、それは自己のプライバシーを保護するために過大な負担を消費者に強いるものだとしている。
たしかに、わざわざプライバシーポリシーの内容を子細に点検してから、サイトアクセスを続けるかどうかを決める人など、普通は居ないはずだ。
次に、消費者の負担を軽減してプライバシー保護を図るために、情報を取得する時点や共有する時点で、そのコンテキストで選択肢が提示されるべきだとしている。
そして、ターゲティング広告をするために企業が行うオンライン追跡を消費者が拒否すれば、最も実用的な方法として、クッキーと同様に、それがブラウザに永続的に設定されるという仕組みが望ましいとしている。他にも、データのブローカー(いわゆる名簿屋)に対して消費者が開示を求められるようにすることなどを提案している。
このレポートは、パブリックコメントに付されており、2011年1月31日が、コメント提出期限とされている。
ということは、現時点ではコメントの提出が締め切られ、寄せられたコメントの分析がされている時期だと推測される。
いずれ私が以前に書いた専門書『個人情報保護法』を改訂することになるだろうが、付け加えなければならないことが、山のように増えてきた。
参 考
Federal Trade Commission (Bureau of Consumer Protection) A Preliminary FTC Staff Report on Protecting Consumer Privacy in an Era of Rapid Change: A Proposed Framework for Businesses and Policymakers (December 1, 2010)
http://www.ftc.gov/os/2010/12/101201privacyreport.pdf
FTCのニュースリリース
http://www.ftc.gov/opa/2010/12/privacyreport.shtm
追 記
すでに最新の Firefox 4 ベータ版には“Do Not Track”機能が先取りされて搭載されたようだ。
http://mozilla.jp/blog/entry/6322/
グーグルまで、類似機能をクロームに搭載と言っている。
http://googlepublicpolicy.blogspot.com/2011/01/keep-your-opt-outs.html
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