« 2011年1月 | トップページ | 2011年3月 »

2011年2月

2011年2月27日 (日)

京大入試問題ネット流出事件2-京大の対応

京大入試問題ネット流出事件については、前の日記で説明したが、京大サイトに、新たなリリースが掲載された。

少し長いが、引用しておく(字の色を変えた部分が引用箇所)。

個別学力試験問題の一部がインターネット掲示板に投稿された件について(2011年2月27日)

 本学個別学力試験の問題の一部がインターネット掲示板に投稿された件について、本学では次のとおり対応することとしました。

(1) 当初の方針どおり合格者を発表する。
(2) 不正行為を行った者が判明した場合は、「合格」を取り消し、その他必要な対応を行う。
(3) 今回被害にあった他大学と協力しつつ、必要な情報交換を行う。
(4) 警察に被害届を提出する予定である。
(5) 今回の事態を踏まえ、不正行為防止策をさらに強化する。

平成23年2月27日 
京都大学理事・副学長 淡路 敏之

出典
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110227_1.htm

以上の措置は、まずは現時点における常識的な対応ということができる。しかも、迅速である点で、好感が持てる。

まず(1)と(2)はセットであり、他の受験生に迷惑を掛けないための当然の対応である。真面目に受験した人たちを、いつ、どうなるか分からない調査の結果が出るまで、宙ぶらりんの状態に置くことは許されないからだ。

次に、(4)については、前の日記で触れた。報道された内容を目にした限りでは著作物と言えるか、疑問が残る。したがって、本命は偽計業務妨害罪だろう。

いずれにしても、リリースに先立って関係者が京都府警に相談に行っているものと推測しうる。法科大学院の実務家教員も、駆り出されている可能性がある。

捜査機関が令状をもらって通信履歴を取得すれば、一般に発信者の特定は困難ではない。

(4)を行うためには(3)が必要となる。今回同種被害にあった他大学は、先に受験が終了しているが、京大の被害が発覚するまで、自校が被害を受けていたことを知らなかったのだろうか。

問題は(5)である。今回の犯人については、誰でも見ることができるネット上の掲示板にアップしていることから、愉快犯の可能性が考えられる(この点の真相究明は捜査結果を待つほかない)。

だが、掲示板へのアップではなく、こっそり隠れて同種行為をしていれば、発見することは困難なのではないか。こう考えると、有効な再発防止策を立案することは、それほど簡単ではない。

しかも、今回は大学入試だったが、それにとどまらず、同種行為は試験全般において問題となりうる。

以上のように、今回の事件が残した波紋は大きい。今後の動向を見守りたい。

追記(2/28 AM 0: 59)

最新の報道によると、京大は業務妨害罪で京都府警に28日に被害届を出す予定で、京都府警は受理して捜査開始の方針とのこと。私の予想が的中してしまった。この上は、早く自首してほしい。人生は、やり直しがきくのだから。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

京大入試問題ネット流出事件

報道によれば、今月25、26日に実施された京大入試(2次試験)に出題された試験問題の一部が、なんと入試時間中であるにもかかわらず、ネット上の掲示板に「答え教えて」などとして投稿され、それに対し、同時間中に第三者が解答を書き込んでいたという事件が発覚した。
http://www.asahi.com/national/update/0226/OSK201102260120.html

自分の母校であるだけに、たいへん残念である。同志社大学、立教大学の入試でも、同様の事件が発生しているようだ。

問題の掲示板には、携帯電話から書き込まれたマークが残っていたという。

受験開始に先立ち、携帯電話を持って入ろうとしていないか、受験生の一人ひとりを、入室時に身体検査することは困難である。せいぜい、試験開始前に、試験中は携帯電話の電源を切り、カバンの中にしまうよう、注意するのが関の山だろう。

試験時間中であっても、腹痛を装ってトイレに行きたいと言われれば、試験監督としても止めようがない。季節が冬だから、着膨れのため、その受験生が携帯電話を隠し持っていても、外見から判別することは困難である。

だが、今回のような行為は、何ら落ち度のない他の受験生の人生を左右しかねない重大な問題であって、大学の適正な入試業務を妨害するものだから、事情によっては、刑法の偽計業務妨害罪に該当する可能性があることは否定できない。

問題文が著作物に該当する場合には、ネット投稿が公衆送信権侵害に該当し、著作権法違反の罪が成立するおそれもあろう。

いずれにしても、今後、誰が行ったか発覚した段階で単に不正行為として不合格扱いとされるだけでなく、その前に刑事事件へと発展する可能性がある。

今回の犯人は愉快犯のつもりかもしれないが、それに対して支払うべき代償は、本人にとって取り返しが付かないものとなるおそれがある。

軽はずみな模倣犯が出現することがないよう、願いたいものである。

追記

京大サイトには、次の文章が掲載されていた。京大の関係者におかれましては、たいへんご苦労さまです。

   記

「本学受験生の皆様へ
 本学個別学力試験(2月25日(金曜日)~27日(日曜日))のうち、25日に行われた数学及び26日に行われた英語の試験問題と同一内容の文章がネット掲示板に掲載されるという事態が発生しました。
 本学では、事実関係等の調査を開始したところであり、仮に、不正行為等が発覚した場合には厳正に対処することといたします。
 なお、受験生の皆様には混乱することのないよう、お願いいたします。

 平成23年2月26日
 京都大学理事 淡路 敏之」

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110226_1.htm

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月26日 (土)

コンピューターウイルス処罰法制を新設する刑事法改正案が今国会提出へ

報道によれば、サイバー犯罪条約に対応するための刑事法改正案が国会に提出される予定だという。
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110210ddm012010047000c.html

思い返せば、最初に同様の改正案が国会に提出されたのは、旧与党政権下のことだった。

それから現在まで、たしかオリンピックが二回も開催されるほどの歳月が流れたが、廃案、法案再提出が繰り返され、成立に至らないまま、国会で塩漬けになっていた。当時の法案は、共謀罪の新設との抱き合わせによるものであって、共謀罪に対して現与党の反対が強かったからだ。共謀罪とは直接の関係もないのに、こうした無理な抱き合わせをした法務省刑事局にも責任があると言うべきだろう。

こうした歳月の間に、ファイル共有ソフト「ウイニー」に寄生する暴露ウイルス「アンティニー」や、その亜種や亜流が続出し、これを真似したウイルスを放流する者も出現した。

そのたびに、アニメが流れる仕組みであることから著作権法違反で刑事摘発したり(原田ウイルス事件)、器物損壊罪で摘発したり(イカタコウイルス事件)、いわば「絡め手」でしか刑事摘発できなかったのも、ウイルス作成罪等の新設が遅れたからだ。私はメディアからの取材に対し、こんなコメントを繰り返さざるを得なかった。

海外産のウイルスが多いことから、国内だけでしか取り締まれない罪を設けてどうするのかと、疑問を呈する向きもある。たしかに、こうした考えにも一理はあるが、上記のとおり、現に国内でもウイルス作成が行われているという事実を忘れてはならない。アンティニーにしても、ウイニーが主として国内で利用されていることを考えると、やはり国内産ウイルスであると見るのが自然だろう。

それに加えて、サイバー犯罪条約を承認している国がウイルス処罰法制を進めているのに、日本だけが欠落していれば、国際的なループホールにもなりかねない。

ようやく今回、共謀罪と切り離した形で法案が提出されることになったという報道に接し、遅きに失したという感が否めない。だからこそ、早期に成立することを望まざるを得ない。

ただ、これまで提出されていた法案にも、問題がなかったわけではない。法文上では、アンチウイルスソフトを作る場合のような適法行為と区分できるか、なおも疑問が残されているからだ。

このような疑義を払拭するため、日弁連が提唱しているように、「正当な理由がないのに」といった文言をプラスすることを提案したい。

まもなく国会に提出されるであろう法案が、どのような内容になるか、見守りたいと思う。

参考

「Winnyの「原田ウイルス」作者に、懲役2年・執行猶予3年の有罪判決」
(インターネットウォッチ)
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/05/16/19585.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月23日 (水)

いま時の若い者は・・・・

新大阪駅で、とんでもない目に遭うところだった。

在来線から新幹線に乗り換えるべく、自動改札に切符を入れたら、私の前に改札を通過しようとした、見知らぬ若い男が、自動改札から出てきた私の切符まで持って行こうとしたらしい。

駅員が追いかけてくれて、取り戻してくれたので、大事には至らなかったが、謝ろうともしない。

この男、故意だとは思いたくないが、切符をコレクションする性癖でもあるのか、それとも単におろかなのか、いずれにしても、下手をすると新幹線に乗れず、関係者にも迷惑を掛けてしまうところだった。

そんなことに思い至るだけの資質もないのか、へらへら笑うだけの男に対し、思わず語気を強めてしまった

「ごめんなさい」すらいえない人が増えている。困ったものである。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

消費者庁「スカスカおせち」問題で行政処分

消費者庁は「スカスカおせち」問題で、販売業者に対する措置命令とグルーポンに対する要請分を行ったことを発表した。

「株式会社外食文化研究所に対する措置命令及びグルーポン・ジャパン株式会社に対する要請について」(平成23年2月22日)

http://www.caa.go.jp/representation/pdf/110222premiums_1.pdf

である。

これによれば、今回、消費者庁が問題にした点は、次の2点。

(ア) 本件商品には、「メニュー内容」として記載された33品のメニューが入っているものと認識するところ、実際には、そのうち8品について、別表「実際」欄記載のとおり、7品は「記載されたメニュー内容」欄記載の食材とは異なる食材が用いられていたもの又は「記載されたメニュー内容」欄記載のメニューとは異なるものが入れられていたものであり、また、1品は入れられていないものであった。

(イ) 本件の表示に寄れば、それを見た者は、通常21,000円で販売されている本件商品が、10,500円で販売されていると認識するところ、実際には、21,000円という価格は架空のものであった。

すでに、本問題については、この日記の

「ネット通販と景品表示法の二重価格表示規制」

http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/01/post-b4d5.html

でも触れた。

この日記の時点では(イ)が発覚していたが、その後、(ア) の点も発覚したものである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月21日 (月)

総務省「情報通信審議会 情報通信政策部会 新事業創出戦略委員会(第1回)」

総務省「情報通信審議会 情報通信政策部会 新事業創出戦略委員会(第1回)」が、先週の平成23年2月17日に開催された。

内容については、いずれ議事録が出るので、ここでは触れないが、すでに会議資料がアップロードされている。

http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/policyreports/joho_tsusin/shinjigyo/02tsushin01_03000044.html

下記の内容であり、特に各構成員の発表資料は、いずれも興味深い力作だ。

資料1-1 新事業創出戦略委員会及び研究開発戦略委員会の設置

資料1-2 「新事業創出戦略委員会」構成員一覧

資料1-3 情報通信審議会議事規則

資料1-4 新事業創出戦略委員会の運営について

資料1-5-1 知識情報社会の実現に向けた情報通信政策の在り方について

資料1-5-2 検討アジェンダ(案)

資料1-5-3 検討の進め方(案)

資料1-5-4 情報通信政策部会における主なご発言

資料1-6 ICT利活用戦略WGの設置について

資料1-7 岩浪構成員 説明資料

資料1-8 太田構成員 説明資料

資料1-9 森川構成員 説明資料

参考資料集

この参考資料集の中の、特に「低迷する」が並んだ「国際展開戦略」の部分と、「EU 欧州デジタル・アジェンダ」を中心とした「海外の動向」の部分は、資料的価値も高い。

それにしても、我が国のICT産業、何とか回復して欲しいと願う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月20日 (日)

あまり知られていない2010年著作権法一部改正

 昨日の日記で解説した「放送法等の一部を改正する法律」(平成22年法律第65号)によって、著作権法も一部改正された。

 放送法等の一部を改正する法律30条として、次のとおり記載されているのが、これにあたる。

 (著作権法の一部改正)

第三十条 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。

  第三十四条第一項中「第二条の二第二項第二号」を「第九十一条第二項第二号」に、「第十四条第三項第三号」を「第十四条第三項第二号」に改める。

  第九十九条の二に次の一項を加える。

 2 前項の規定は、放送を受信して自動公衆送信を行う者が法令の規定により行わなければならない自動公衆送信に係る送信可能化については、適用しない。

  第百二条第五項ただし書及び第百三条中「第九十九条の二」を「第九十九条の二第一項」に改める。

 これによって、著作権法は次のとおりとなった。以下、改正された条項を改正後の体裁で示す。

(学校教育番組の放送等)
著作権法第三十四条 公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度において、学校教育に関する法令の定める教育課程の基準に準拠した学校向けの放送番組又は有線放送番組において放送し、若しくは有線放送し、又は当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域(放送法(昭和二十五年法律第百三十二号)第九十一条第二項第二号に規定する放送対象地域をいい、これが定められていない放送にあつては、電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第十四条第三項第二号に規定する放送区域をいう。以下同じ。)において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行い、及び当該放送番組用又は有線放送番組用の教材に掲載することができる。
2 (略)

(送信可能化権)
著作権法第九十九条の二 放送事業者は、その放送又はこれを受信して行う有線放送を受信して、その放送を送信可能化する権利を専有する。
2 前項の規定は、放送を受信して自動公衆送信を行う者が法令の規定により行わなければならない自動公衆送信に係る送信可能化については、適用しない。

(著作隣接権の制限)
著作権法第百二条 (略)
2~4 (略)
5 著作隣接権の目的となつている実演であつて放送されるものは、専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として送信可能化(公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものに限る。)を行うことができる。ただし、当該放送に係る第九十九条の二第一項に規定する権利を有する者の権利を害することとなる場合は、この限りでない。
6~9 (略)

(著作隣接権の譲渡、行使等)
著作権法第百三条 第六十一条第一項の規定は著作隣接権の譲渡について、第六十二条第一項の規定は著作隣接権の消滅について、第六十三条の規定は実演、レコード、放送又は有線放送の利用の許諾について、第六十五条の規定は著作隣接権が共有に係る場合について、第六十六条の規定は著作隣接権を目的として質権が設定されている場合について、第六十七条、第六十七条の二(第一項ただし書を除く。)、第七十条(第三項及び第四項を除く。)、第七十一条から第七十三条まで並びに第七十四条第三項及び第四項の規定は著作隣接権者と連絡することができない場合における実演、レコード、放送又は有線放送の利用について、それぞれ準用する。この場合において、第六十三条第五項中「第二十三条第一項」とあるのは「第九十二条の二第一項、第九十六条の二、第九十九条の二第一項又は第百条の四」と、第七十条第五項中「前項」とあるのは「第百三条において準用する第六十七条第一項」と読み替えるものとする。

 以上は、放送法等の改正に伴うものであって、主として放送関係の規定に手が加えられたものである。

 したがって、実質的な内容変更ではない。あくまでも形式的なものにすぎないから、安心されたい。しかし、条文を参照、引用するような場合には、間違っていると恥ずかしいから、知っておく必要があるはずだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月19日 (土)

通信・放送融合法制(放送法等の一部改正-平成22年)

1.はじめに

 第176回国会(臨時会)で「放送法等の一部を改正する法律」(平成22年法律第65号)が平成22年11月26日に成立した。

 これによって、通信・放送法体系の見直しが、60年振りに行われた。

 総務省によれば、主として「通信・放送分野におけるデジタル化の進展に対応した制度の整理・合理化を図るための改正」である。これまで通称「通信・放送融合法制」と呼ばれてきたものである。

 全体については、次の図を参照(出典は総務省の公表資料)。

Q

2.放送関係

 今回の法整備によって、各種の放送形態に対する制度が統合された。

 具体的には、放送関連の電気通信役務利用放送法、有線テレビジョン放送法、及び有線ラジオ放送法は廃止された。それによって放送法に一本化される一方、新たに放送が「基幹放送」と「一般放送」に区分された。同時に、通信関連の有線放送電話法も廃止されている。

 基幹放送とは、放送用に専ら又は優先的に割り当てられた周波数を使用する放送をいう。一般放送とは、基幹放送以外の放送をいう。

 基幹放送については、無線局の設置・運用(ハード)と放送の業務(ソフト)を分離するかどうか、弾力的に決定できることになった。分離を希望する者のために、無線局の「免許」と放送業務の「認定」に手続を分離する制度を設ける一方、分離ではなく一致を希望する地上放送事業者のために、「免許」のみで足りる現行制度も併存させた。

 一般放送に該当する有線テレビジョン放送、有線ラジオ放送及び電気通信役務利用放送については、参入制度を見直し、これまで「許可」「登録」等であったものが、「登録」を原則とする制度に統合された。但し、一般放送のうち有線ラジオ放送等は「届出」によって参入が可能である。

 放送法関係では、他にも、マスメディア集中排除原則の基本の法定化、放送における安全・信頼性の確保、放送番組の種別の公表、有料放送における提供条件の説明等、再放送同意に係る紛争処理に関するあっせん・仲裁制度の整備が行われている。

3.電波法関係

 電波法関係も見直しが進められた。

 まず、通信・放送両用無線局の制度の整備が行われた。これは、無線局の主たる目的に支障のない範囲で、1つの無線局を通信にも放送にも利用しうるよう、無線局の免許制度を改正するものである。同時に、免許を受けた後に、許可を受けて無線局の目的を変更することも可能となった。

 他にも、免許不要局の拡大、携帯電話基地局の免許の包括化等が図られている。

4.電気通信事業法関係

 紛争処理機能の拡充、二種指定事業者に係る接続会計制度の創設等が図られた。

参 考

提出時法律案

修正案1:第176回提出(可決)

経過

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月18日 (金)

「文化審議会著作権分科会 報告書」の最終バージョン

今年の改正の方向性を示した正式版がアップロードされました。

「文化審議会著作権分科会報告書」(平成23年1月)

http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/pdf/shingi_hokokusho_2301_ver02.pdf

にあります。

それにしても、「デジタル・ネットワーク社会に対する認識、評価について」「技術的保護手段の見直し」などという項目が目に付きます。インターネット関係が大きな地位を占めているのです。

純然たる法学者や法律実務家の先生方には、もっと、こうした動向や技術をきちんと把握して正確に理解してほしいものです。

追記

報告書と改正の行方に関する具体的な個別内容については、下記を参照されたい。

2011年著作権法改正と保護期間延長論の行方
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/2011-8e7f.html

著作権法平成23年(2011年)改正の行方-権利制限の一般規定(日本版フェアユース)の導入
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/232011-58f6.html

アクセスコントロール規制と著作権法改正案の行方
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/post-f83b.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月17日 (木)

2011年著作権法改正と保護期間延長論の行方

 著作権の保護期間を現行よりも延長すべきか、かねてから議論が対立してきた。

 文化審議会著作権分科会(第33回)資料「文化審議会著作権分科会 報告書(案)」によれば、今期も延長は見送りになったようだ。曰く……

 保護期間延長問題については、保護期間を欧米諸国並に延長するべきであるとの意見や、戦時加算を早期解消するべきといった意見が出された。
 本問題については、第9期まで「過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会」において検討され、一定のとりまとめが行われているが結論を得るまでに至っていないことを受け、今後、様々な状況の変化を踏まえつつ、関係者による建設的な検討が行われるような議論の場を設ける必要がある。

 つまり、今年の改正には入らない。

 私は延長に対しては消極論である。理由を述べる。

 積極論は、延長は新たな創作意欲を高めること、国際的な調和などを主要な理由としている。

 この問題は、なぜ知的財産権を法制度で保護しているのか、という観点から考えれば、自然と答えが出るはずである。

 知的財産権保護は、産業や文化の発展の奨励という目的を達成するための手段である。放置すれば無断で模倣されるため、一定期間の独占権という報奨を与えることによって創作意欲、そして成果物の公表を促進しようとする制度である。これをインセンティブ論という。著作権の「保護」と言えば聞こえはいいが、それは特定の情報について、特定の者に独占権を与えることにほかならない。

 こうした観点に立つと、すでに創作済みの作品について期間を延長しても、時計の針を過去の創作時点に戻せないから、創作意欲を高める効果は生まれず無意味であることが分かる。

 では、これから創作される作品について、延長には文化の発展を促進する効果があるのか。

 われわれの社会は先人の偉業をベースにしている。長すぎる保護期間は先人の偉業を用いた“知の共有”を困難にするので、かえって産業や文化の発展を妨げる。例えば今後将来も電気を使うたびに、エジソンの子孫に許諾料を支払わなければならないとすればナンセンスである。

 また、現状ですら、供給される膨大な作品の大多数は死蔵され、歴史の中に埋もれている。むしろ人類共有の遺産として、広く利用される機会を設ける方が有意義である。

 それに加え、保護期間が長いほど、よい作品が出せたはずだという議論は、芸術家に対する冒涜ではないか。
 こう考えると、延長積極論は、真の創作を理解しておらず、百害あって一利なしであろう。私も物書きの端くれとして、強い確信を持って、そう思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月16日 (水)

講演会案内「ネット家電と法律」

来る2011年2月24日(木)、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)主催の
「情報セキュリティ月間記念シンポジウム2011」で
「ネット家電と法律」をテーマに講演します。

場所: ベルサール飯田橋 1階ホール
参加費: 無料(事前登録制)

全体の詳細は
http://www.ipa.go.jp/about/press/20110209.html

プログラム内容は
http://www.ipa.go.jp/about/press/pdf/110209press2.pdf

事前登録は
https://ipa-rcpt.ipa.go.jp/event_entry/index/8/

このテーマに興味のある方、もしくは実物の私を見てやろうという方(笑)はお越しください。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月14日 (月)

消費者庁「第7回インターネット消費者取引研究会」の資料アップロード

平成23年2月10日に行われたばかりの消費者庁「第7回インターネット消費者取引研究会」の資料が、消費者庁サイトにアップロードされた。

http://www.caa.go.jp/adjustments/index_6.html

• 議事次第[PDF:41KB]
• 配布資料1-1(インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向けた取組について(一次案)〔概要〕)[PDF:577KB]
• 配布資料1-2(インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向けた取組について(一次案))[PDF:199KB]
• 配布資料1-3(インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向け特に重点的に取組事項)[PDF:141KB]
• 配布資料2(いわゆる決済代行問題の考え方について)[PDF:779KB]
• 配布資料3(研究会の開催スケジュールについて)[PDF:63KB]
• 配布資料4(第6回研究会議事要旨)[PDF:157KB]

である。

この中でも重要なのは

 配布資料1-2(インターネット取引に係る消費者の安全・安心に向けた取組について(一次案))

である。

「スカスカおせち」問題などがあった後だけに、「広告表示」に力点が置かれていることが注目される。「共同購入サイトなどのフラッシュマーケティング(割引クーポン等を期間限定で販売するマーケティング手法)に係る二重価格表示」も取り上げられているのだ。

「口コミサイトにおける広告料をもらった上でのカキコミ(いわゆるサクラ記事)」などと並んで、「いわゆるフリーミアム(基本的なサービスを無料で提供し、高度な、あるいは、追加的なサービスを有料で提供して収益を得るビジネスモデル)における正確でない「無料」といった表示」も射程に入っている。

実効性担保のために、「厳正かつ迅速な法執行及びネット上の監視活動の強化等」が謳われているのも注目される。

もうひとつの課題は、「決済代行業者」の問題。これについては配布資料2を参照されたい。

加えて、「インターネット消費者取引研究会(第6回)議事要旨」もアップされている。
http://www.caa.go.jp/adjustments/pdf/110214adjustments_4.pdf

これによって議論の動向が分かるはずだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月13日 (日)

廃墟写真集事件判決-東京地判平成22年12月21日平21(ワ)451号-その2

 近時は写真の著作物について重要判例が相次いでおり、 昨日の日記に続き、上記判決について、簡単に評釈しておきたい。

評 釈

1.写真の著作物の保護範囲

 まず、写真の著作物について、(1)同一の写真の全部又は一部をデッドコピーした場合に複製権等の侵害となることは争いがない。これに対し、本件のように、(2)同一の被写体を別途写真撮影した場合にも侵害が成立しうるか、換言すると、写真の著作物として保護されるべき範囲に含まれうるか、については争いがある。

 これを否定する判例もあるが、本判決は、上記(2)についても写真の著作物の保護範囲に含まれうることを前提にしつつ、侵害の成否を論じている。上記保護範囲に含まれうることの理由として、翻案権侵害の成否に関する江差追分事件最高裁判決の基準(表現上の本質的特徴の直接感得性)を引用している。

 この基準による限り、上記(2)も上記保護範囲に含まれうるという結論が論理一貫することになろう。同一の被写体を別途写真撮影したときでも、元の著作物の表現上の本質的特徴を直接感得しうることがありうるのは当然だからである。

2.写真の著作物の表現上の本質的特徴

 次に、上記(2)も上記保護範囲に含まれうるとしても、その場合に、如何なる要素をもって、写真の著作物における「表現上の本質的特徴」というべきか、という問題は別である。これは、写真の著作物について、何が表現の要素たりうるかという問題でもある。

 この点について、一般的には「撮影上の工夫」という言葉がキーワードとされている(さらに現像上の工夫が副次的に付加されることもある)。これに対し、本判決の事実適示によれば、原告は「被写体及び構図の選択」にある旨主張している。

 まず、構図の選択が、撮影上の工夫に含まれうる重要な要素であることは、一般に異論がない。

 次に、被写体の選択について、原告は「『廃墟写真』という写真ジャンルにおいては、被写体たる廃墟の選定が重要な意味を持つ。」と主張している。

 この主張が具体的に何を意味しているのか必ずしも判然としないが、少なくとも同一被写体であること自体は、「表現上の本質的特徴」の対象たり得ないと考えるべきである。これを認めると、極論すれば、誰かが先に富士山を撮影すれば、後続して誰も富士山を撮影できないという不合理な結果を招くからである。

 その一方、特定の被写体について、どのような構図で撮影するかという工夫の意味であれば、構図の選択と実質的に大差がないこととなろう。

 本判決は、被写体の選択それ自体については「原告が主張する原告写真1において旧丸山変電所の建物内部を被写体として選択した点はアイデアであって表現それ自体ではな」いなどとして、保護の範囲外である旨判示している。前述のとおり、それ自体は妥当な判断であると思われる。

 ちなみに、写真の著作物の保護範囲に関し、上記(1)及び(2)以外にも、みずみずしいスイカ事件判決のように、(3)類似した被写体を自ら作成して撮影した場合が、上記保護範囲に含まれうるかという問題として、被写体の選択や決定が争点となる場合もある。しかし、本件は、自ら作成した被写体の問題ではない点で、上記(3)とは異なっている。被写体の選択や決定は、自ら作成した被写体かどうかを区別して論じるべきことについて、岡村久道『著作権法』85頁を参照されたい。

 いずれにせよ、本判決は、原告写真と被告写真を対比して、その共通点と異なる点を検討した上、表現上の本質的特徴の直接感得性が認められないとした。

 個々の判断の当否については、裁判所サイトに写真が掲載されていないので、ここで正確に判断することには無理があるから控えたい。しかし、本判決を読む限り、「表現上の本質的特徴」に関する原告の具体的主張を踏まえ、かなり具体的な点にまで言及して、その当否を論じている限度では、おおむね高く評価しうるものであろう。

 但し、本判決中には、白黒写真かカラー写真かに触れている部分が少なくないが、それ自体はアイデアの違いにすぎず、それによって、どのような撮影効果という具体的な創作的表現がもたらされたという限度で、意味があるにすぎない。本判決も、この点は前提としていると思われるが、判決理由中に、この点を、もう少し明確化した方が良かったのではないか。

3.関連問題

(a) 本件では問題にならなかったが、上記(1)から(3)まで以外にも、(4)当該写真を絵画にした場合にも、写真の著作物の侵害が成立しうるか、換言すると、それらについても写真の著作物として保護されるべき範囲に含まれうるか、については争いがあり、それに言及した判例も登場している。については、本件とは直接関係しないのでここでは触れないが、重要な問題であるから、さしあたり、岡村久道・前掲書83頁を参照されたい。

(b) 表現上の本質的特徴の直接感得性という基準は、同一性保持権の成否についても問題となり、やはり判例上でも言及されている。この点については前掲書317頁参照。

(c) 表現上の本質的特徴の直接感得性に関する判断は、言語著作物や音楽著作物などでも問題となり、やはり判例上でも言及されている。この点については前掲書455頁以下参照。

判決文-裁判所サイト

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110106124424.pdf

参 考

廃墟写真集事件判決-東京地判平成22年12月21日平21(ワ)451号-その1

http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/22122121451-625.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月12日 (土)

廃墟写真集事件判決-東京地判平成22年12月21日平21(ワ)451号-その1

 昨年の暮れに言い渡された東京地判平成22年12月21日平21(ワ)451号(廃墟写真集事件)は、写真の著作物に関する翻案権等の侵害が主要争点となった事例である。

事案の概要

 本判決によると、事案の概要は次のとおりである。

 本件は、原告が、原告が撮影した「廃墟」を被写体とする写真(いわゆる「廃墟写真」)と同一の被写体を、被告において撮影して写真を作成し、それらの写真を掲載した別紙書籍目録1ないし4記載の各書籍(以下「被告各書籍」といい、それぞれの書籍を「被告書籍1」、「被告書籍2」などという。)を出版及び頒布した行為が、原告の有する写真の著作物の著作権(翻案権、原著作物の著作権者としての複製権、譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権)を侵害し、また、被告が「廃墟写真」という写真ジャンルの先駆者である原告の名誉を毀損したなどと主張して、被告に対し、①著作権法112条1項、2項に基づく被告各書籍の増製及び頒布の差止め並びに一部廃棄、②著作権侵害、著作者人格権侵害、名誉毀損及び法的保護に値する利益の侵害の不法行為による損害賠償、③著作権法115条及び民法723条に基づく名誉回復等の措置としての謝罪広告を求めた事案である。

判 旨

 本件で問題となった写真は合計5枚であったようであるが、次の理由を述べて、本判決は請求をすべて棄却した。

 著作物の翻案(著作権法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
 そして、著作権法は、思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照)、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分や表現上の創作性がない部分は、ここにいう既存の著作物の表現上の本質的な特徴には当たらないというべきである。

 本件において、原告は、「廃墟写真」の写真ジャンルにおいては被写体である「廃墟」の選定が重要な意味を持ち、原告写真1ないし5の表現上の本質的な特徴は被写体及び構図の選択にある旨主張しているので、被告写真1ないし5の作成がこれに対応する原告写真1ないし5の翻案に当たるか否かを判断するに当たっては、原告が主張する原告写真1ないし5における被写体及び構図の選択における本質的特徴部分が上記のような表現上の本質的な特徴に当たるかどうか、被告写真1ないし5において当該表現上の本質的特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要がある。

 以上の一般論を前提に、本判決は、本件で侵害の成否が問題となった被告の各写真と原告の各写真とを比較して、その共通点と異なる点を検討した上、それらの写真すべてについて、写真全体から受ける印象が大きく異なることを理由に、被告の各写真から原告の各写真の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないとして、複製権・翻案権の侵害を認めなかった。

 さらに、本件では、名誉毀損の不法行為の成否等も争点となったが、それらについても裁判所は認めなかった。

 次回の日記では、簡単な評釈を掲載する予定である。

判決文-裁判所サイト

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110106124424.pdf

追記-参考

廃墟写真集事件判決-東京地判平成22年12月21日平21(ワ)451号-その2

http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/22122121451-3e0.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月11日 (金)

米連邦取引委員会(FTC)-“Do Not Track”

“Do Not Track”とは「追いかけるな」という意味である。

といっても、ストーカー問題ではない。地方の国道沿いにあるドライブインで時折見かける「トラックの駐車場乗り入れお断り」という看板でもない。

オンライン追跡拒否という意味である。FTCがすでに迷惑電話勧誘対策に実施している「Do Not Call(電話勧誘拒否登録)」のネット版だと考えればわかりやすい。我が国では、ライフログを用いた行動ターゲティング広告の問題として議論されている。

米連邦取引委員会(FTC)は、2010年12月1日、プライバシー問題レポートで新たな政策の枠組みの提案を公表した。オンライン追跡について、消費者の選択を容易にすることを支持するというものである。その中で“Do Not Track”と謳われている。

レポートを詳しく読む時間がないので正確性は保証しかねるが、どうやら次の趣旨のことらしい。

まず、レポートは、これまで、企業ではプライバシーポリシーが用いられてきたが、それは自己のプライバシーを保護するために過大な負担を消費者に強いるものだとしている。

たしかに、わざわざプライバシーポリシーの内容を子細に点検してから、サイトアクセスを続けるかどうかを決める人など、普通は居ないはずだ。

次に、消費者の負担を軽減してプライバシー保護を図るために、情報を取得する時点や共有する時点で、そのコンテキストで選択肢が提示されるべきだとしている。

そして、ターゲティング広告をするために企業が行うオンライン追跡を消費者が拒否すれば、最も実用的な方法として、クッキーと同様に、それがブラウザに永続的に設定されるという仕組みが望ましいとしている。他にも、データのブローカー(いわゆる名簿屋)に対して消費者が開示を求められるようにすることなどを提案している。

このレポートは、パブリックコメントに付されており、2011年1月31日が、コメント提出期限とされている。

ということは、現時点ではコメントの提出が締め切られ、寄せられたコメントの分析がされている時期だと推測される。

いずれ私が以前に書いた専門書『個人情報保護法』を改訂することになるだろうが、付け加えなければならないことが、山のように増えてきた。

参 考

Federal Trade Commission (Bureau of Consumer Protection) A Preliminary FTC Staff Report on Protecting Consumer Privacy in an Era of Rapid Change: A Proposed Framework for Businesses and Policymakers (December 1, 2010)

http://www.ftc.gov/os/2010/12/101201privacyreport.pdf

FTCのニュースリリース

http://www.ftc.gov/opa/2010/12/privacyreport.shtm

追 記

すでに最新の Firefox 4 ベータ版には“Do Not Track”機能が先取りされて搭載されたようだ。

http://blog.mozilla.com/blog/2011/02/08/mozilla-firefox-4-beta-now-including-do-not-track-capabilities/

http://mozilla.jp/blog/entry/6322/

グーグルまで、類似機能をクロームに搭載と言っている。

http://googlepublicpolicy.blogspot.com/2011/01/keep-your-opt-outs.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月 9日 (水)

京都府「児童ポルノ規制条例検討会議」

昨年9月から開始された。

「児童ポルノの被害から児童の人権を守れるよう、条例による規制のあり方や実効性を検討すること」を目的としている。

第4回までの議事録と配付資料が、以下のウェブページに公表されている。

http://www.pref.kyoto.jp/shingikai/seisyo-02/

本年度末までに結論を出すことが予定されているが、検討すべき論点は多く、かつ重い。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月 8日 (火)

青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する中間報告

総務省から平成23年2月7日付けで「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備に関する中間報告」が公表されている。

「利用者視点を踏まえたICT サービスに係る諸問題に関する研究会」のものである。

http://www.soumu.go.jp/main_content/000101359.pdf

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月 7日 (月)

著作権法平成23年(2011年)改正の行方-権利制限の一般規定(日本版フェアユース)の導入

文化審議会著作権分科会(第33回)資料「文化審議会著作権分科会 報告書(案)」によれば、ようやく日本版フェアユースが導入される方向となった。

早ければ平成23年(2011)改正での導入を目指しているようだ。

権利制限の一般規定のことであり、一定の包括的な考慮要件を定めた上で、権利制限に該当するかどうかは裁判所の判断に委ねるという方式の権利制限規定(権利制限の一般規定)である。

新たな権利制限が求められている利用形態について、その都度必要性等について審議し、関係者間の合意が得られ次第、個別規定を改正・創設する方法が採用されてきた。

しかし、この方法では、技術の急速な進歩等に伴い生じる新たな利用形態に対して、立法措置に時間がかかる上、利用者や新規ビジネスへの萎縮効果がある一方、個別規定は、厳格に解釈すべきであると一般に理解されており、民法上の一般規定に解決を委ねるよりも、著作権に特化した権利制限の一般規定を導入する方が、規律の明確化を図ることができると考えられたのである。

権利者側の負担増により実質的公平性を欠く等の指摘については、権利制限の一般規定の要件や趣旨等を明確にすることや、十分な周知を図ることにより、ある程度解消することが可能であるとされた。

そこで、権利者の利益を不当に害さず、社会通念上、権利者も権利侵害を主張しないであろうと考えられる著作物の利用であっても、企業をはじめとして法令遵守が強く求められている現代社会においては、利用者が権利侵害となる可能性を認識し、利用を躊躇する場合もあると考えられ、権利制限の一般規定の導入によりかかる萎縮効果が一定程度解消されることが期待できる。

具体的には、次のAからCの類型の利用行為を、権利制限の一般規定による権利制限の対象と位置付けることが適当であるとされている。

A.著作物の付随的な利用

その著作物の利用を主たる目的としない他の行為に伴い付随的に生ずる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的または量的に社会通念上軽微であると評価できるもの

B.適法利用の過程における著作物の利用

適法な著作物の利用を達成しようとする過程において合理的に必要と認められる当該著作物の利用であり、かつ、その利用が質的又は量的に社会通念上軽微であると評価できるもの

C.著作物の表現を享受しない利用

著作物の種類及び用途並びにその利用の目的及び態様に照らして、当該著作物の表現を知覚することを通じてこれを享受(見る、聞く等)するための利用とは評価されない利用

さらに、次のような留保条件が付いている。

AからCの類型の利用行為であっても、権利者の利益を不当に害する可能性が否定できないため、社会通念上著作権者の利益を不当に害しない利用であることを追加の要件とする等の方策を講ずることが必要。

さらに、A~C及び上記のいずれにも該当しない利用については、権利制限の必要性を慎重に検討した上で、必要に応じ個別規定の改正・創設により対応することが適当。

==============================

とはいえ、まだ残された課題は多い。具体的には、次のような点である。

権利制限の対象とする支分権及び著作物の種類

著作者人格権との関係

既存の個別規定等との関係

強行法規性

刑事罰との関係

実効性・公平性担保のための環境整備

==============================

中古ソフト事件で最高裁は、それまでの通説である限定列挙説を排し、制限規定を実質的に例示列挙扱いしたといってよい。

しかし、新たに権利制限の一般規定(日本版フェアユース)が導入されることによって、今後はより広く、個別規定以外にも制限が認められることが明確となる。

こうして中山先生が御苦労された成果が、ようやく実を結ぼうとしている。

まだ上記のような課題はあるが、導入が進むように祈るものである。

参考-文化審議会著作権分科会(第33回)資料「文化審議会著作権分科会 報告書(案)」
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/bunkakai/33/pdf/shiryo_4_2.pdf

| | コメント (3) | トラックバック (0)

2011年2月 6日 (日)

指揮者・山田一雄先生の想い出

私は京都大学へ通っていた当時、京都市左京区の岡崎に住んでいた。平安神宮は目と鼻の先であり、白川通りを渡って、しばらく歩けば、南禅寺界隈へと突き当たる。谷崎潤一郎先生が名作「細雪」を執筆した「前の潺湲亭」は、南禅寺下河原町にあった。今では現存しない代わりに、さらに北へ向かって哲学の道に上がれば、それを入った東山の際に、谷崎先生が眠る法然院がある。夏の猛暑日には、よく本を持って行って法然院の境内で涼んだものだ。

岡崎には京都市美術館や国立近代美術館などとともに、疎水に沿って京都会館がある。いわば観光地の真ん中に下宿していたわけだが、京都会館にあった大ホールが、当時における京都市交響楽団の定期演奏会場となっていた。
京都市交響楽団は日本で唯一の自治体直営オーケストラだったようだ。

山田一雄先生は、1972年から1976年まで、京響の第6代常任指揮者だった。ちなみに、第4代常任指揮者が外山雄三先生、第5代常任指揮者が渡邉暁雄先生だった。

退任後も、若杉弘先生らとともに、よく京響の定演を振っておられたと記憶している。

山田先生の映像作品として、残念なことに京響とのものは知らないのだが、晩年にN響を振ったモーツアルトのジュピターが残っている。重めの演奏が主流の時代だったが、テンポを速めにとって音を短めに刻む山田先生の指揮から紡ぎ出される音楽は、とても生き生きとして、躍動感にあふれていた。モーツアルトには、そうした躍動感が不可欠なのである。

そのためなのか、画面を見るとN響の弦は盛大にビブラートを掛けているのだが、音だけ聴いていてると全く気にならない。むしろ出てくる音は、現在主流のピリオド系と通じるかのような透明感のあるものだった。

山田先生は白髪で、せわしないというか、時折指揮台上で飛び跳ねたり、体全体を使った個性的な指揮だったが、そうした指揮振りが目立つ半面、その音作りは誠実そのものだった。コーダのフーガが天井へと吸い込まれるように、曲が終わった直後のお顔は、むしろ精根尽き果てたかのような表情だ。

あの指揮振りは、お世辞にも格好がよいものとはいえなくても、何とかオケに自分が望む音を伝えるための、先生なりの必死の動作だったのではないか。

日本人の中にも格好を付けた流麗な指揮者が増えてきた現在、山田先生が生きておられたら、そういう若い指揮者を見て、どのようにおっしゃるだろうか。

もうそろそろ、我が国で山田先生の音楽が見直されてもいいはずである。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2011年2月 5日 (土)

速報-住基ネット国立市離脱事件判決(東京地判平成23年2月4日)

住基ネット(住民基本台帳ネットワークシステム)離脱が住民基本台帳法違反に該当するとした判決が、平成23年2月4日、東京地裁で言い渡された。

東京都国立市の住民らが、国立市長に対し、不参加によって生じる費用の支出差し止めなどを求めた住民訴訟。

住基ネットについては、すでに最判平成20年3月6日 民集62巻3号665頁 が、

住民基本台帳ネットワークシステムにより行政機関が住民の本人確認情報を収集,管理又は利用する行為は,当該住民がこれに同意していないとしても,憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものではない。

との判断を示している。

 上記最高裁判決文
  ↓
 http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=35933&hanreiKbn=01

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月 4日 (金)

アクセスコントロール回避規制の法整備-まとめ

著作権法改正の方向性

これまでコピーコントロールだけを対象にしてきた著作権法が、改正案によれば、アクセスコントロールも対象にすることになる。
救済方法という点では、現行のコピーコントロールに関するものを、そのままアクセスコントロールにも及ぼすという方向性が示されている。
したがって、民事的救済方法としては、アクセスコントロール回避を伴う複製行為が、私的複製の場合を含めて、複製権侵害として、差止請求等の対象となる。同時に、罰則の対象ともなる。
次に、アクセスコントロール回避機器・プログラムの公衆への譲渡・貸与、公衆譲渡等目的の輸入・所持、公衆供与、公衆送信、送信可能化は罰則の対象となる。

不正競争防止法改正の方向性

不正競争防止法は、従来から、コピーコントロールとアクセスコントロールの双方を対象としてきた。
改正案によれば、規制対象装置等の「のみ」要件を見直して、これに代えて「専ら」を要件とする方向となる。
従来どおり、個々の回避行為そのものを規制対象としない方向。
技術的制限手段の回避サービスについては規制対象としないが、技術的制限手段回避装置等の製造行為については、引き続き検討。
一定の悪質な行為に限定して刑事罰の対象とする方向で検討することが適切。
技術的制限手段回避装置等について水際措置を導入する方向。

両法改正の方向性

新たにアクセスコントロールについて両法の重複が一部生じる。
どちらかといえば著作権法改正の影響が大きく、これまで不正競争防止法が対象とせず、これからも対象としない「アクセスコントロール回避を伴う私的複製」が、この改正が行われると、新たに罰則付きで違法となる点が大きい。

感 想

コピーコントロールとアクセスコントロールの概念上の区別は不可能ではないが、実際には後者が前者の役割で用いられることが多い。例えば、最初から技術的にコピーできなくするよりも、コピーそれ自体は可能にした上、コピー時に暗号化して、特定の鍵がある場合にのみ読むことができる方式の方が、様々な条件に適合させることができ、技術としても、ビジネス的にも、優れているはずであろう。後者こそがアクセスコントロール技術の利点であり、デジタル録音録画等の領域では、すでに広く用いられている。したがって、いくらWIPO著作権条約の批准準備のためのものであったにしても、現行著作権法のような概念区分は現実に即していない。その限度では、今回の改正の方向性は評価しうる。

但し、両法の「棲み分け」という見地からは、重複が生じることによって複雑化したことは否めない。省庁間のタテ割りが、今回も一部重複が発生した原因であると指摘する声も聞かれる。

著作権法に一本化する方法も考えられるが、本当にアクセスコントロールは著作物だけの問題なのか、疑問も残る。

ちなみに、文化庁が、従来用いてきた「コピープロテクション」なる奇妙な用語を「コピーコントロール」へと改めたことは評価できる。

おわりに

気が付けば、今回の改正案を含め、著作権法には、デジタル関連の諸規定が多数を占める状況となってしまった。今後も、こうした著作権法の「デジタル化傾向」は強まるばかりであろう。

著作権法に関し、実務的にも、学問的にも、コンピュータや情報ネットワークに関する基礎知識が不可欠の時代になったことを痛感せざるを得ない。

参 考

1.アクセスコントロール規制と著作権法改正案の行方
 http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/post-f83b.html

2.不正競争防止法によるアクセスコントロール規制とマジコン事件判決
 http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/post-4899.html

3.アクセスコントロール規制と不正競争防止法改正案の行方
 http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/post-830c.html

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月 3日 (木)

アクセスコントロール規制と不正競争防止法改正案の行方

アクセスコントロール規制と不正競争防止法改正案の行方

過去二回に分けて、現行の著作権法と不正競争防止法の「技術的手段」回避に関する規制内容について触れてきた。

これを一覧表にして示すと、次の表のとおりとなる。

B

(出典・経済産業省・産業構造審議会知的財産政策部会「技術的制限手段に係る規制の在り方に関する小委員会」の報告書「技術的制限手段に係る不正競争防止法の見直しの方向性について(案)」)

両法を比較した特徴の概要を示すと、次のとおりである。

1.どちらもコピーコントロールを対象としているが、不正競争防止法のみがアクセスコントロールも対象としている。

2.どちらも回避機器等の提供等を禁じている点で共通するが、著作権法のみが、その製造、回避サービスの提供、そして回避を伴う複製行為を対象としている点で広い。これに対し、両法ともに回避行為それ自体は対象としていない。

3.刑事罰は著作権法のみが設けている。

=========================

こうした中で、平成23年1月25日に開催された文化庁の文化審議会著作権分科会(第33回)によって、同分科会法制問題小委員会「技術的保護手段に関する中間まとめ(平成22年12月)」に関する意見募集の結果について審議され、著作権法を改正して、新たにアクセスコントロール技術回避行為に対し規制を加えようとする方向が示されたことは前述した。

http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/post-f83b.html

これに対し、平成22年12月の経済産業省・産業構造審議会知的財産政策部会「技術的制限手段に係る規制の在り方に関する小委員会」の報告書「技術的制限手段に係る不正競争防止法の見直しの方向性について(案)」によって、技術的制限手段に関する同法改正の方向も打ち出されている。

この報告書案の骨子は、次の内容である。

(1)規制対象装置等の見直し(「のみ」要件の見直し)
不正競争防止法の規制対象装置等については、機器メーカーの事業活動を過度に抑制することを避けるため、営業上用いられている技術的制限手段を回避する機能「のみ」を有する装置等が規制対象となっている(「のみ」要件)。平成11年当時からの状況の変化等を踏まえ、「のみ」要件を見直すことについて検討を行う。

→ 装置等の客観要件について、この「のみ」に代えて「専ら」を要件とする方向で検討を進める。引き続き主観的要件については導入しないことが適当。

(2)ユーザーの回避行為の規制
ユーザー(特に個人)の回避行為については、回避装置等の提供行為に比較し、個々の回避行為自体は、互いに独立に行われ、個々の被害も限定的であり、かつ、個々の行為を民事訴訟の対象とすることが困難であることから、不正競争防止法上、「不正競争」としていない。平成11年当時からの状況の変化等を踏まえ、ユーザー(特に個人)の回避行為を新たに規制の対象とすることについて検討を行う。

→ 個々の技術的制限手段の回避行為そのものを不正競争防止法における規制の対象とするかどうかについては、引き続き消極に解することが適当。

(3)技術的制限手段回避装置等の製造行為と回避サービスの提供行為の規制
回避装置等の製造行為については、技術開発への萎縮効果に配慮する必要があること等の理由から、また、回避サービスの提供行為については、平成11年当時、当該規制の検討は必要最小限のものとすることとしており、実態が出現した時点で検討すべしと整理したことから、不正競争防止法上、「不正競争」としていない。平成11年当時から状況の変化等を踏まえ、回避装置等の製造と、回避サービスの提供行為を新たに規制の対象とすることについて検討を行う。

→ 技術的制限手段の回避サービスにつき不正競争防止法において独立して規制の対象とするかどうかについては、消極に解することが適当。これに対し、技術的制限手段回避装置等の製造行為については、既存の法令によって一定程度の対応が可能であり、今後とも回避装置等の国内での製造実態とこれに伴う影響等を注視しながら対応を検討することが適当。

(4)技術的制限手段回避装置等の提供行為の刑事罰の導入
技術的制限手段回避装置等の提供行為(装置の譲渡、引き渡し、譲渡等のための展示、輸出、輸入、プログラムの電気通信回線を通じた提供)については、不正競争防止法上、「不正競争」行為の一つとし、営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれのある者は、民事請求(差止請求、損害賠償請求等)を行えることとしている。平成11年当時からの状況の変化等を踏まえ、新たに刑事罰の対象とすることについて検討を行う。

→ 一定の悪質な行為に限定して刑事罰の対象とする方向で検討することが適切。

(5)技術的制限手段回避装置等に対する水際措置の導入
技術的制限手段回避装置等は、水際措置の対象とされていないが、平成11年当時からの状況の変化等を踏まえ、回避装置等を新たに水際措置の対象とすることについて検討を行う。

→ 技術的制限手段回避装置等についても水際措置を導入することが極めて有効。

=========================

以上の詳細については、下記の報告書案を直接参照されたい。

参考-経済産業省・産業構造審議会知的財産政策部会「技術的制限手段に係る規制の在り方に関する小委員会」の報告書「技術的制限手段に係る不正競争防止法の見直しの方向性について(案)」
http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/chitekizaisan/gijutsutekiseigen/004_03_00.pdf

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月 2日 (水)

不正競争防止法によるアクセスコントロール規制とマジコン事件判決

これまでアクセスコントロール技術の回避規制は、著作権法ではなく、不正競争防止法によって行われてきた。前述した著作権法の改正に向けた検討作業と同時に、不正競争防止法についても見直しが検討されている。より規制内容を広げる方向での検討である。

前提として、現行の不正競争防止法による規制内容を、後記マジコン事件判決を素材に説明しておく。

まず、同法2条10項・11項は次のような規定内容である。

(定義)
第二条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一~九 (略)
十  営業上用いられている技術的制限手段(他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために用いているものを除く。)により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為
十一  他人が特定の者以外の者に影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録をさせないために営業上用いている技術的制限手段により制限されている影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器を当該特定の者以外の者に譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為
十二~十五 (略)
2~6 (略)

両項ともに、アクセスコントロールとコピーコントロールを対象としている。この点で、コピーコントロールに限って対象としている現行の著作権法と異なっている。

以上のような不正競争防止法のアクセスコントロール技術の回避規制規定が適用された事件が、東京地判平成21年2月27日だった。いわゆるマジコン事件である。

本件は,携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」等を製造,販売する原告任天堂並びに同ゲーム機用のゲームソフトを格納したゲーム・カード(DSカード)を製造,販売する原告らが,被告らに対し,被告装置(R4 Revolution for DS)の輸入,販売等が不正競争防止法2条1項10号に違反すると主張して,同法3条1項及び2項に基づき,同装置の輸入,販売等の差止め及び在庫品の廃棄を求めた事案であった。

本判決は、不正競争防止法2条1項10号の制度趣旨について、「我が国におけるコンテンツ提供事業の存立基盤を確保し,視聴等機器の製造者やソフトの製造者を含むコンテンツ提供事業者間の公正な競争秩序を確保するために,必要最小限の規制を導入するという観点に立って,立法当時実態が存在する,コンテンツ提供事業者がコンテンツの保護のためにコンテンツに施した無断複製や無断視聴等を防止するための技術的制限手段を無効化する装置を販売等する行為を不正競争行為として規制するものである」とした上、「技術的制限手段」に関する同法2条7項について触れている。

同項は、「技術的制限手段」を次のとおり定義している。

(定義)
第二条
1~6 (略)
7 この法律において「技術的制限手段」とは、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識することができない方法をいう。)により影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録を制限する手段であって、視聴等機器(影像若しくは音の視聴若しくはプログラムの実行又は影像、音若しくはプログラムの記録のために用いられる機器をいう。以下同じ。)が特定の反応をする信号を影像、音若しくはプログラムとともに記録媒体に記録し、若しくは送信する方式又は視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像、音若しくはプログラムを変換して記録媒体に記録し、若しくは送信する方式によるものをいう。
8~10 (略)

本判決は、同項の「技術的制限手段」は「(a)コンテンツに信号又は指令を付し,当該信号又は指令に機器を一定のルールで対応させる形態」と「(b)コンテンツ自体を暗号化する形態」の2つの形態を包含し,前者の例として「無許諾記録, 物が視聴のための機器にセットされても,機器が動かない(ゲーム)」が挙げられているが,この例は,本判決の分類では,検知→可能方式であるとした上、同立法当時,規制の対象となる無効化機器の具体例としてMODチップが挙げられているが,このMODチップは,本判決の分類にいう検知→可能方式のものを無効化するものであり,当初から特殊な信号を有しない自主制作ソフト等の使用も可能とするものであったとした。

本判決は、以上の不正競争防止法2条1項10号の立法趣旨と,無効化機器の1つであるMODチップを規制の対象としたという立法経緯に照らすと,不正競争防止法2条7項の「技術的制限手段」とは,コンテンツ提供事業者が,コンテンツの保護のために,コンテンツの無断複製や無断視聴等を防止するために視聴等機器が特定の反応を示す信号等をコンテンツとともに記録媒体に記録等することにより,コンテンツの無断複製や無断視聴等を制限する電磁的方法を意味するものと考えられ,検知→制限方式のものだけでなく,検知→可能方式のものも含むとした。そして、原告仕組みは,以上のように解された不正競争防止法2条7項の技術的制限手段に該当し,同法2条1項10号の営業上用いられている技術的制限手段によりプログラムの実行を制限するとの点も満たしているとした。

次に、本件では、同法2条10項・11項の「機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を記録した記録媒体若しくは記憶した機器」にいう「のみ」の要件を満たすかどうかという点が問題となった。

本判決は、次のように述べて、これを満たすとした。

「前記1(1)~(3)及び上記(1)アの立法趣旨及び立法経緯に照らすと,不正競争防止法2条1項10号の「のみ」は,必要最小限の規制という観点から,規制の対象となる機器等を,管理技術の無効化を専らその機能とするものとして提供されたものに限定し,別の目的で製造され提供されている装置等が偶然「妨げる機能」を有している場合を除外していると解釈することができ,これを具体的機器等で説明すると,MODチップは「のみ」要件を満たし,パソコンのような汎用機器等及び無反応機器は「のみ」要件を満たさないと解釈することができる。」
これによれば,「被告装置は,以上のように解された不正競争防止法2条1項10号の「のみ」要件を満たしている。」

以上の検討を経て、本判決は差止請求等を認容した。

次の機会に、同法改正の行方に触れたい。

参考-本判例の原文
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090306192548.pdf

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年2月 1日 (火)

アクセスコントロール規制と著作権法改正案の行方

平成23年1月25日に開催された文化庁の文化審議会著作権分科会(第33回)で、技術的保護手段が議題となった。

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会「技術的保護手段に関する中間まとめ(平成22年12月)」に関する意見募集の結果について、審議されたものである。

この「中間まとめ」は、著作権法を改正して、新たにアクセスコントロール技術回避行為に対し規制を加えようとする内容のものである。

現行法では、保護技術のうち、著作物等に信号を付加する方式のコピーコントロール技術が対象とされる一方、アクセスコントロール技術は対象外となっている。

それは、著作権法は「複製」は規制していても、単なる「使用」は規制対象外であるという考え方に基づいている。つまり、荒っぽい例えだが、書籍をコピーすることは禁じていても、本屋さんに立ち寄って、置いてある本を立ち読みすること自体は禁じていないのだ。

文化庁によれば、コピーコントロールとは、複製等の支分権の対象となる行為を技術的に制限すること。アクセスコントロールとは、著作物等の視聴等といった支分権の対象外の行為を技術的に制限すること、という整理となる。

ところが、ファイル共有ソフト等により著作物の違法利用が常態化する半面、違法利用全体の捕捉、摘発が現実的に困難な中、著作物等の保護技術は、権利保護のため必要不可欠であるが、マジコンなどの回避機器の氾濫により、コンテンツ業界に多大な被害が生じているとして、アクセスコントロール技術も対象とすべきであるとしたものである。

つまり、コピーコントロール技術か、アクセスコントロール技術かという違いは技術面に着目したものにすぎず、実態も含めた社会的な機能という観点からすれば、両者を区別する合理性はない。

そこで、著作権法に、従来から存在する「技術的保護手段」という概念を拡張して、その中に両者を含めるようにした。次に、それに用いられている「信号の除去又は改変」を「技術的保護手段の回避」として位置付けた上、回避規制を再検討しようというものである。

具体的な規制内容としては、従来のコピーコントロール技術に関する規制内容を、ほぼそのままアクセスコントロール技術にも及ぼそうというものである。

ところで、これまでアクセスコントロール技術の回避規制は、著作権法ではなく、不正競争防止法で行われてきた。

したがって、今回の著作権法改正案の前記方向性によって、不正競争防止法の規制と実質的な重複が生じる。この点については改めて論じたい。

参考-文化審議会著作権分科会(第33回)資料「文化審議会著作権分科会 報告書(案)」
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/bunkakai/33/pdf/shiryo_4_2.pdf

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2011年1月 | トップページ | 2011年3月 »