京大入試問題ネット流出事件2-京大の対応
京大入試問題ネット流出事件については、前の日記で説明したが、京大サイトに、新たなリリースが掲載された。
少し長いが、引用しておく(字の色を変えた部分が引用箇所)。
個別学力試験問題の一部がインターネット掲示板に投稿された件について(2011年2月27日)
本学個別学力試験の問題の一部がインターネット掲示板に投稿された件について、本学では次のとおり対応することとしました。
(1) 当初の方針どおり合格者を発表する。
(2) 不正行為を行った者が判明した場合は、「合格」を取り消し、その他必要な対応を行う。
(3) 今回被害にあった他大学と協力しつつ、必要な情報交換を行う。
(4) 警察に被害届を提出する予定である。
(5) 今回の事態を踏まえ、不正行為防止策をさらに強化する。
平成23年2月27日
京都大学理事・副学長 淡路 敏之
出典
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news7/2010/110227_1.htm
以上の措置は、まずは現時点における常識的な対応ということができる。しかも、迅速である点で、好感が持てる。
まず(1)と(2)はセットであり、他の受験生に迷惑を掛けないための当然の対応である。真面目に受験した人たちを、いつ、どうなるか分からない調査の結果が出るまで、宙ぶらりんの状態に置くことは許されないからだ。
次に、(4)については、前の日記で触れた。報道された内容を目にした限りでは著作物と言えるか、疑問が残る。したがって、本命は偽計業務妨害罪だろう。
いずれにしても、リリースに先立って関係者が京都府警に相談に行っているものと推測しうる。法科大学院の実務家教員も、駆り出されている可能性がある。
捜査機関が令状をもらって通信履歴を取得すれば、一般に発信者の特定は困難ではない。
(4)を行うためには(3)が必要となる。今回同種被害にあった他大学は、先に受験が終了しているが、京大の被害が発覚するまで、自校が被害を受けていたことを知らなかったのだろうか。
問題は(5)である。今回の犯人については、誰でも見ることができるネット上の掲示板にアップしていることから、愉快犯の可能性が考えられる(この点の真相究明は捜査結果を待つほかない)。
だが、掲示板へのアップではなく、こっそり隠れて同種行為をしていれば、発見することは困難なのではないか。こう考えると、有効な再発防止策を立案することは、それほど簡単ではない。
しかも、今回は大学入試だったが、それにとどまらず、同種行為は試験全般において問題となりうる。
以上のように、今回の事件が残した波紋は大きい。今後の動向を見守りたい。
追記(2/28 AM 0: 59)
最新の報道によると、京大は業務妨害罪で京都府警に28日に被害届を出す予定で、京都府警は受理して捜査開始の方針とのこと。私の予想が的中してしまった。この上は、早く自首してほしい。人生は、やり直しがきくのだから。
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