アクセスコントロール回避規制の法整備-まとめ
著作権法改正の方向性
これまでコピーコントロールだけを対象にしてきた著作権法が、改正案によれば、アクセスコントロールも対象にすることになる。
救済方法という点では、現行のコピーコントロールに関するものを、そのままアクセスコントロールにも及ぼすという方向性が示されている。
したがって、民事的救済方法としては、アクセスコントロール回避を伴う複製行為が、私的複製の場合を含めて、複製権侵害として、差止請求等の対象となる。同時に、罰則の対象ともなる。
次に、アクセスコントロール回避機器・プログラムの公衆への譲渡・貸与、公衆譲渡等目的の輸入・所持、公衆供与、公衆送信、送信可能化は罰則の対象となる。
不正競争防止法改正の方向性
不正競争防止法は、従来から、コピーコントロールとアクセスコントロールの双方を対象としてきた。
改正案によれば、規制対象装置等の「のみ」要件を見直して、これに代えて「専ら」を要件とする方向となる。
従来どおり、個々の回避行為そのものを規制対象としない方向。
技術的制限手段の回避サービスについては規制対象としないが、技術的制限手段回避装置等の製造行為については、引き続き検討。
一定の悪質な行為に限定して刑事罰の対象とする方向で検討することが適切。
技術的制限手段回避装置等について水際措置を導入する方向。
両法改正の方向性
新たにアクセスコントロールについて両法の重複が一部生じる。
どちらかといえば著作権法改正の影響が大きく、これまで不正競争防止法が対象とせず、これからも対象としない「アクセスコントロール回避を伴う私的複製」が、この改正が行われると、新たに罰則付きで違法となる点が大きい。
感 想
コピーコントロールとアクセスコントロールの概念上の区別は不可能ではないが、実際には後者が前者の役割で用いられることが多い。例えば、最初から技術的にコピーできなくするよりも、コピーそれ自体は可能にした上、コピー時に暗号化して、特定の鍵がある場合にのみ読むことができる方式の方が、様々な条件に適合させることができ、技術としても、ビジネス的にも、優れているはずであろう。後者こそがアクセスコントロール技術の利点であり、デジタル録音録画等の領域では、すでに広く用いられている。したがって、いくらWIPO著作権条約の批准準備のためのものであったにしても、現行著作権法のような概念区分は現実に即していない。その限度では、今回の改正の方向性は評価しうる。
但し、両法の「棲み分け」という見地からは、重複が生じることによって複雑化したことは否めない。省庁間のタテ割りが、今回も一部重複が発生した原因であると指摘する声も聞かれる。
著作権法に一本化する方法も考えられるが、本当にアクセスコントロールは著作物だけの問題なのか、疑問も残る。
ちなみに、文化庁が、従来用いてきた「コピープロテクション」なる奇妙な用語を「コピーコントロール」へと改めたことは評価できる。
おわりに
気が付けば、今回の改正案を含め、著作権法には、デジタル関連の諸規定が多数を占める状況となってしまった。今後も、こうした著作権法の「デジタル化傾向」は強まるばかりであろう。
著作権法に関し、実務的にも、学問的にも、コンピュータや情報ネットワークに関する基礎知識が不可欠の時代になったことを痛感せざるを得ない。
参 考
1.アクセスコントロール規制と著作権法改正案の行方
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/post-f83b.html
2.不正競争防止法によるアクセスコントロール規制とマジコン事件判決
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/post-4899.html
3.アクセスコントロール規制と不正競争防止法改正案の行方
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/02/post-830c.html
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