アクセスコントロール規制と著作権法改正案の行方
平成23年1月25日に開催された文化庁の文化審議会著作権分科会(第33回)で、技術的保護手段が議題となった。
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会「技術的保護手段に関する中間まとめ(平成22年12月)」に関する意見募集の結果について、審議されたものである。
この「中間まとめ」は、著作権法を改正して、新たにアクセスコントロール技術回避行為に対し規制を加えようとする内容のものである。
現行法では、保護技術のうち、著作物等に信号を付加する方式のコピーコントロール技術が対象とされる一方、アクセスコントロール技術は対象外となっている。
それは、著作権法は「複製」は規制していても、単なる「使用」は規制対象外であるという考え方に基づいている。つまり、荒っぽい例えだが、書籍をコピーすることは禁じていても、本屋さんに立ち寄って、置いてある本を立ち読みすること自体は禁じていないのだ。
文化庁によれば、コピーコントロールとは、複製等の支分権の対象となる行為を技術的に制限すること。アクセスコントロールとは、著作物等の視聴等といった支分権の対象外の行為を技術的に制限すること、という整理となる。
ところが、ファイル共有ソフト等により著作物の違法利用が常態化する半面、違法利用全体の捕捉、摘発が現実的に困難な中、著作物等の保護技術は、権利保護のため必要不可欠であるが、マジコンなどの回避機器の氾濫により、コンテンツ業界に多大な被害が生じているとして、アクセスコントロール技術も対象とすべきであるとしたものである。
つまり、コピーコントロール技術か、アクセスコントロール技術かという違いは技術面に着目したものにすぎず、実態も含めた社会的な機能という観点からすれば、両者を区別する合理性はない。
そこで、著作権法に、従来から存在する「技術的保護手段」という概念を拡張して、その中に両者を含めるようにした。次に、それに用いられている「信号の除去又は改変」を「技術的保護手段の回避」として位置付けた上、回避規制を再検討しようというものである。
具体的な規制内容としては、従来のコピーコントロール技術に関する規制内容を、ほぼそのままアクセスコントロール技術にも及ぼそうというものである。
ところで、これまでアクセスコントロール技術の回避規制は、著作権法ではなく、不正競争防止法で行われてきた。
したがって、今回の著作権法改正案の前記方向性によって、不正競争防止法の規制と実質的な重複が生じる。この点については改めて論じたい。
参考-文化審議会著作権分科会(第33回)資料「文化審議会著作権分科会 報告書(案)」
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/singikai/bunkakai/33/pdf/shiryo_4_2.pdf
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