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2011年3月 5日 (土)

今後の手続等-京大入試問題ネット流出事件

マスメディアの報道によって、次第に事件の細部が明らかになってきた。少年の供述に関する報道を総合すると、次のようである。

まず、行為態様については、いわゆる共犯はおらず、1人で行った。スマホではなく、一般的な携帯電話を使った。母名義の携帯であり、発売1年未満の新機種だった。トイレには行かず、自席からメール投稿した。携帯を左手で股間に挟んで、左手で文字入力して投稿し、画面確認した。動機は母親を安心させたかったから。他の私大入試でも行った。

もし、これが事実であれば、大学側の試験監督が不十分であったという意見が出ても不思議がないはずである。現に、大学側への批判があることを伝える報道もある。この点がどうなのかについては、現時点では明らかでない。今後の捜査等で明らかになるはずであろう。

他方で、逮捕は行き過ぎだったという意見も聞かれる。大学側に不十分な点があったことも、その理由とされている。ただ、少年は一度行方不明になっており、保護者から捜索願が出ていたこと、大規模な報道や社会的非難の大きさ等を併せて考えると自殺のおそれがあったこと、いったん保護した後に、自宅へ帰宅させても家族だけで十分な保護が可能か、不安が残ること、その他の事情を考えると、保護者と警察とが、いったん帰宅させることについて不安があるという意見で一致した可能性も捨てきれない。いずれにしても、こうした場合の扱いは、理屈で割り切ることが難しいのも事実なのではなかろうか。

また、大学側が被害届を出したのは安易だったという意見もあるようだ。しかし、これだけ社会問題化したにもかかわらず、大学が何も行わないというわけにはいくまい。ただし、大学側に不十分な点があったのであれば、その点は率直に受け止めなければならないだろう。

さらに、テレビのコメンテーターの中には、大学独自の調査で足りたという意見を述べる人もいるが、疑問が残る。今回の関係各大学を受験している点で共通しているというだけで、特定の受験生を「犯人扱い」をして事情を聴取することは、社会的に許されるのだろうか。世論から「安易に犯人扱いした」として非難される可能性がある。ヤフーやDoCoMoも今回の通信に関する情報を、通信の秘密やプライバシーとの関係で、大学には出してくれないはずだ。

今後の手続について説明する。

報道によれば京都地検に送検されたようだが、現時点では未成年なので、検察官による取り調べの後、意見を付けて家庭裁判所に事件を送致する。送致を受けた事件について家庭裁判所は調査した後、審判するかどうかを決定する。保護的措置等による審判不開始となるケースもある。審判の場合でも不処分となる可能性がある。審判過程で、少年が非行を克服し、保護処分を要しないと認められた場合である。後述の理由で、こうした結果となることも十分に考えられる。

本件少年は本件実行時には19歳であるが、審判時までに20歳以上となれば、少年法19条によって検察庁への年超検送を要する。検送とは検察に送致するという意味である。本件では少年の生年月日が明らかではないが、それ次第では年超検送に該当するケースが生じる。同法20条の場合と違って、検察官は必ずしも起訴しなければならないわけではない。あとは一般の刑事事件と同様である。少年は深く反省していること、再び同じ過ちを犯すおそれは極めて低いこと、社会的制裁を受けていること、大学側にも落ち度が認められたこと等を考えると、本件では不起訴となる可能性も十分に考えられる。

いずれにしても、詳細が分からない現段階では、これ以上の詳しい予測は困難である。

本件については、書くかどうか迷ったが、上記のように、さまざまな意見が出ていることや、今後の動向という点から、最小限のことだけでもまとめた次第である。

いったんこれで落ち着くことを願うものである。

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