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2011年4月 3日 (日)

駒込大観音事件2-知財高判平成22年3月25日判時2086号114頁

1.はじめに

前回の日記
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/04/post-9a5c.html
では,第1審判決について触れた。第1審判決に対し,XとY1の双方が控訴した。

そこで,今回は,控訴審判決(知財高判平成22年3月25日判時2086号114頁)について触れる。「事案の概要」については,前回の日記を参照されたい。

ちなみに、次の写真左が本件観音像、右が本件原観音像である。

Photo

   (出典・末尾記載の最高裁サイト本判決書93頁)

2.控訴審における追加的請求

Xは,第1審判決において,「事案の概要」で記載した①から④までの請求をしていた。控訴審において,さらにXは次のとおり追加的請求を行った。

⑤ T及びRから相続した展示権侵害を理由とする法112条1項,2項に基づく原状回復請求,及び法112条1項に基づく一般公衆の観覧に供する行為の停止請求,

⑥ X固有の展示権侵害を理由とする,不法行為に基づく損害賠償請求,T及びRから相続した展示権侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求,及びXの被告らに対する,遺族としての深い愛着・名誉感情侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求

その結果,Xの求める請求の内容及び原因は34個となった。

3.著作者性

まず、本判決は,著作者性との関係で、「法14条所定の推定を覆す事実があるから,Xを本件原観音像の共同著作者と認めることはできないとして,Xの共同著作者性を否定した。Tについても共同著作者性を否定した。これらの結論は第1審判決と同様である。それゆえ,本判決も,Xの共同著作者としての各請求,及び,Tの遺族としてのXの各請求は,いずれも理由がない。」とした。

残された請求は,Rの遺族としてのXの各請求となった。

4.各請求に関する結論

本判決は,「①Y1による本件観音像の仏頭部のすげ替え行為は,著作者であるRが生存しているとしたならばその著作者人格権(同一性保持権,法20条)の侵害となるべき行為であり,②法113条6項所定の「著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当し,侵害とみなされるべき行為であり,③法60条のただし書等により許される行為には当たらないと判断する。したがって,XはRの遺族として,法116条1項に基づいて,法115条に規定するRの名誉声望を回復するための適当な措置等を求めることができると解される。そして,当裁判所は,すべての事情を総合考慮すると,法115条所定のRの名誉声望を回復するためには,被告らが,本件観音像の仏頭のすげ替えを行った事実経緯を説明するための広告措置を採ることをもって十分であり,法112条所定の予防等に必要な措置を命ずることは相当でないと判断するものである。」とした。

5.法20条2項4号への該当性-否定

上記①との関係で,法20条2項4号所定の「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」に該当するかどうか,という点が問題となっており,これを本判決は認めなかった。

本件の「経緯に照らすと,被告らによる本件原観音像の仏頭部を新たに制作して,交換した行為には,相応の事情が存在する」が,次の理由によって,「観音像の眼差しを修正し,慈悲深い表情に変えるとの目的で,被告らが実施した本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為は,法20条2項4号所定の『やむを得ないと認められる改変』のための方法に当たるということはできない。」とした。

「たとえ,Y1が,観音像の眼差しを半眼下向きとし,慈悲深い表情とすることが,信仰の対象としてふさわしいと判断したことが合理的であったとしても,そのような目的を実現するためには,観音像の仏頭をすげ替える方法のみならず,例えば,観音像全体を作り替える方法等も選択肢として考えられるところ,本件全証拠によっても,そのような代替方法と比較して,被告らが現実に選択した本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為が,唯一の方法であって,やむを得ない方法であったとの点が,具体的に立証されているとまではいえない。」

6.法113条6項への該当性-肯定

さらに,本判決は,「被告らによる本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為は,Rが社会から受ける客観的な評価に影響を来す行為である」から,「113条6項所定の,『(著作者であるRが生存しているとしたならば,)著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為』に該当する」とした。

7.法115条所定の適当な措置

以上のとおり,被告らによる本件原観音像の仏頭部のすげ替え行為は,著作者であるRが生存しているとしたならば,同一性保持権の侵害となるべき行為であり,また,法113条6項の著作者人格権のみなし侵害となるべき行為であるとすれば,その遺族であるXは,法116条1項に基づいて,法115条,112条所定の適当な措置等を求めることができるはずである。

この点を理由に,Xが,「法115条所定の適当な措置として,Y1に対し,仏頭部を本件原観音像制作当時の仏頭部に原状回復措置,公衆の閲覧に供することの差止め等,被告らに対し謝罪広告措置等を求めている。」ことが,認められるかという点が問題となった。

本判決は,「①Xが求める謝罪広告中(訂正広告を含む。),その客観的な事実経緯を周知するための告知をすることで,Rの名誉,声望を回復するための措置としては十分であり,②仏頭部を本件原観音像制作当時の仏頭部に原状回復する措置や謝罪広告を掲載する措置,公衆の閲覧に供することの差止めについては,いずれも,Rの名誉,声望を回復するための適当な措置等とはいえない」とする一方,「Rの名誉声望を維持するためには,事実経緯を広告文の内容として摘示,告知すれば足りるものと解すべきであり,別紙広告目録記載第1の内容が記載された広告文を同目録記載第2の新聞に,同目録記載第2の要領で掲載することが相当である」とした。

すなわち,「被告らによる本件観音像の仏頭部のすげ替え行為は,確かに,著作者が生存していたとすれば,その著作者人格権の侵害となるべき行為であったと認定評価できるが,本来,本件原観音像は,その性質上,Y1が,信仰の対象とする目的で,Rに制作依頼したものであり,また,仏頭部のすげ替え行為は,その本来の目的に即した補修行為の一環であると評価することもできること,交換行為を実施した被告Yは,Rの下で,本件原観音像の制作に終始関与していた者であることなど,本件原観音像を制作した目的,仏頭を交換した動機,交換のための仏頭の制作者の経歴,仏像は信仰の対象となるものであること等を考慮するならば,本件において,原状回復措置を命ずることは,適当ではない」としたのである。

8.Rから相続した展示権に基づく請求について

ところで,XはRの相続人であり,Rから展示権を相続している。本件観音像は,本件原観音像の二次的著作物である。そこで,本件でXは原著作物の著作権者として,展示権侵害を理由として本件観音像を公衆の観覧に供することの差止請求(法112条1項)及び原状回復請求(法112条2項)を求めていた。

本判決は,これを認めなかった。その理由として,「観音像は,その性質上,信仰の対象として,拝観者をして観覧させるものであり,このような観音像の本来の目的に照らすならば,Rが,自己が制作した観音像の展示については,一般的,包括的かつ永続的に承諾をした上で,制作したとみるのが自然である。したがって,Xが,Rから相続したと主張する展示権に基づいて,公衆の観覧に供することの差止め及びこれに関連する原状回復を求めることが許される余地はな」く,「本件観音像は,本件原観音像の眼差しを修正する目的から,頭部を交換したものであり,本件原観音像そのものではないが,……事実経緯等に基づき総合判断するならば,Xの有する展示権に基づく,本件観音像の展示差止めの請求が許されないのは同様である。」と判示している。

9.その余の請求について

最後に,遺族としての深い愛着・名誉感情侵害を理由とする損害賠償請求についても,本判決は否定した。

10.参考-判決文

 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20100326155245.pdf

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