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2011年4月23日 (土)

クラウドコンピューティングとプログラムライセンスに関するメモ

なぜ問題となるか

 クラウドコンピューティングでは、一般に仮想化技術が用いられている。すなわち、クラウドベンダが複数のサーバコンピュータを事前に用意し、これをリソースとしてプールしておき、それを複数のユーザーがネットを介して共同で利用することが多い。これによって、個々のユーザーの利用度合い等に応じて、クラウドベンダ側で、用いるべきリソース配分を変化させることや、処理が嵩む場合に対処すべくミラーリングを実施することが可能になる。ときとして、瞬時にサーバが切り替わることもある。

 こうしたクラウドに見られる特質は、プログラム著作物のライセンスとの関係で、新たな問題を惹起する。ここでは、クラウドを利用するユーザーの観点から、それを簡単に書き留めておきたい。

クライアント側にソフトウェアプログラムをインストールして実行させる場合

 ユーザーが、クラウドサーバ側ではなく、個々のクライアント側に、サードパーティ製のソフトウェアプログラムを、あらかじめインストールしておいて実行させる場合には、当該プログラムのライセンスについて、特にクラウドであるからといって、特別視すべき点はない。データの保管先が、当該クライアントのハードディスク内から、クラウドのサーバ側に変更されるだけであって、特にプログラムの複製等が新たに生じるわけではないからである。したがって、個々のクライアントについて、従来どおりプログラムのライセンス管理をすれば足りる。

サーバ側にソフトウェアプログラムをインストールして実行させる場合

 これに対し、サーバ側にプログラムをインストールして実行させるケースでは問題が生じうる。

 このケースでは、一般には、ネットを介してプログラムをダウンロードさせるわけではなく、ただサーバ側のプログラムによる処理結果(データ)を、クライアント側に打ち返すだけである。したがって、プログラム自体については、そもそも送信していないのであるから、公衆送信権との関係は問題とならない。

 それがクラウドベンダ側が用意したプログラムであれば、もともとクラウドサーバでの利用が想定されているはずであり、クラウド利用契約中に定められたライセンス条項に従うことで足りる。

 プログラムが、ユーザー側で用意したものであって、サードパーティ製である場合には、当該プログラムを複数に使用させることになるから、ライセンス契約の内容次第では、契約違反となる可能性がある。それゆえ、パッケージソフトであれば、ユーザー側は利用に先立ってライセンス内容に関し上記の点を吟味する必要がある。オーダーメイドのプログラムを開発してもらう場合にも、その可否に関する関連条項の確認や調整が必要となろう。

 ところで、クラウドでは、複製権との関係でも問題となる場合がある。前述のように、仮想化のため、ミラーリングやサーバの切り替えが行われることがあるため、複数台のサーバにプログラムがインストールされるケースが発生するからである。これが、クラウドで特に問題となる点である。

 ここでも、クラウドベンダ側が用意したプログラムであれば、もともと、それらのケースを想定した契約となっているはずである。

 これに対し、サードパーティ製のプログラムである場合には、複製権との関係で問題が生じる。したがって、複数のライセンスが必要か事前にソフトウェアベンダ側に対し確認しておく必要がある。

サーバ側からクライアント側にプログラムをダウンロードさせて実行させる場合

 以上の両ケースの中間形態として、サーバ側にソフトウェアプログラムをインストールした上、それをクライアントにダウンロードさせて、クライアント側で実行させる場合はどうか。Java Appletのようなケースである。

 この場合には、クライアント側の求めに応じて、サーバ側からプログラムをクライアント側へと送信することになる。これをダウンロードするクライアントのユーザーが、不特定、又は多数である場合には、公衆送信に該当し、公衆送信権の対象となりうる。

 公衆送信権への該当性はさておいても、スタンドアロンの使用を前提としたライセンス内容であれば、かかる利用形態は契約違反となることもあろう。

 もちろん、ダウンロードしたものが、GPL(GNU GENERAL PUBLIC LICENSE)が適用されたプログラムなのであれば、クライアントは、自由にそれをそのまま、あるいは改変した上、複製して再配布することができる。改変して配布する際にはソースコードの公開を忘れずに。

補足-AGPLの位置付け

 クラウドコンピューティングと、AGPL(AFFERO GENERAL PUBLIC LICENSE)との関係について質問を受けることがある。そこで、これについても、簡単に説明しておきたい。

 GPLでは、改変プログラムを外部公開する場合には、ソースコードの公開を求めている。そのため、GPLが適用されたプログラムについては、自社の運営するデータセンターなどで自社利用する限り、改変しても公開を要しないという点で問題がある。

 AGPLは、こうした問題を解消する目的で作られたライセンス条項である。AGPLは、それが適用されたプログラムについて、ソースコードの公開を条件とすることを可能としている。このように、AGPLは、エンドユーザーとの関係というよりは、サーバ用プログラムのソースコード公開との関係で問題となるものである。

クラウドに関する他の問題については

「クラウドコンピューティングと法律」
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2010/12/post-09f7.html
参照。

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