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2011年4月 5日 (火)

駒込大観音事件4-本件原観音像制作当時の仏頭部に原状回復する措置について

本件では第1審判決,控訴審判決ともに,116条(著作者又は実演家の死後における人格的利益の保護のための措置)にいう「遺族」にXが該当するとしている。

同条は,3種類の請求権を「遺族」に付与している。

その内容は
「著作権法116条の読み方」
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/01/116-45d2.html
を参照されたい。

この中で,本件では60条違反の行為に対する名誉回復等措置請求権が問題となった。

同条は,著作者の死後における著作者人格権侵害相当行為を禁じている。すなわち,著作者の死亡等によって著作者人格権は消滅するが,その場合でも,その著作物を公衆に提供・提示する者が,著作者が存しているなら著作者人格権の侵害となるべき行為(著作者人格権侵害相当行為)をすることが,原則として禁止されている(60条本文)。

第1審判決は,本件原観音像の仏頭部ををすげ替えて,公衆の観覧に供していることが,本件原観音像に係る著作者(亡兄R)の同一性保持権に対する死後の侵害相当行為に該当するとした。

これに対し,控訴審判決は,死後の前記同一性保持権侵害相当行為に該当することに加えて,113条6項所定の,「(著作者であるRが生存しているとしたならば,)著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為」に該当するとした。後者は,Xが控訴審で追加した請求である。

60条違反の行為に対し,著作者の遺族Xは,116条に基づいて,「著作者…の死後における人格的利益の保護のための措置」をとるよう請求することができる。具体的には,112条に基づく差止請求権と,115条に基づく名誉回復等措置請求権である。

115条の内容については,
「著作権法115条の読み方」
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/01/115-e3ce.html
参照。

第1審判決は,同条について次の3分類を提唱し,このうちのbに該当するとして,仏頭部を本件原観音像制作当時の仏頭部に原状回復する措置を命じた。

a.「著作者又は実演家であることを確保……するために適当な措置」
b.「訂正……するために適当な措置」
c.「その他著作者若しくは実演家の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置」

これに対し,控訴審判決は,「諸般の事情を総合考慮するならば,①原告が求める謝罪広告中(訂正広告を含む。),その客観的な事実経緯を周知するための告知をすることで,Rの名誉,声望を回復するための措置としては十分であり,②仏頭部を本件原観音像制作当時の仏頭部に原状回復する措置や謝罪広告を掲載する措置,公衆の閲覧に供することの差止めについては,いずれも,Rの名誉,声望を回復するための適当な措置等とはいえない」とした。

すなわち,控訴審判決は,前記3分類には触れることなく,「被告らによる本件観音像の仏頭部のすげ替え行為は,確かに,著作者が生存していたとすれば,その著作者人格権の侵害となるべき行為であったと認定評価できるが,本来,本件原観音像は,その性質上,被告光源寺が,信仰の対象とする目的で,Rに制作依頼したものであり,また,仏頭部のすげ替え行為は,その本来の目的に即した補修行為の一環であると評価することもできること,交換行為を実施した被告Y2は,Rの下で,本件原観音像の制作に終始関与していた者であることなど,本件原観音像を制作した目的,仏頭を交換した動機,交換のための仏頭の制作者の経歴,仏像は信仰の対象となるものであること等を考慮するならば,本件において,原状回復措置を命ずることは,適当ではない」としている。

前記3分類の是非はともかくとしても、前記判旨中の「本件原観音像は,その性質上,被告光源寺が,信仰の対象とする目的で,Rに制作依頼したものであり,また,仏頭部のすげ替え行為は,その本来の目的に即した補修行為の一環である」という部分は重要であろう。

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