大阪地裁平成23年3月23日判決-ドロップシッピング関連の新判例
ドロップシッピングに関する珍しい判例(大阪地裁平成23年3月23日判決)が登場したので、紹介しておきたい。
本件は、「ウインドシッビング」と称するインターネットショッピング運営支援事業「ウインドシッビング」を展開する被告とウインドシッビングの利用契約を締結し、被告に対して、契約金等を支払った原告らが、ウインドシッビングは特定商取引に関する法律(特商法) 51条に定める業務提供誘引販売取引に当たり、同法58条1項に基づき同契約を解除(クーリング・オフ) した、または、被告による同契約の勧誘の際に不実告知があったから、同法58条の2第1項1号、52条1項5号に基づき同契約を取り消したと主張して、被告に対し、契約解除に基づく原状回復請求又は不当利得返還請求として、各既払代金(別紙契約一覧表「契約金額」欄記載の各金員)の返還を求めた事案である。
主な争点は、特定商取引法上の「業務提供誘引販売」の該当性であり、本判例は、次のとおり述べて、これを認めた。
「ウインドシッビングにおいては、購入者に対する関係では加入者が売主となるものの、ネットショップの運営主体は、実質的には被告であり、原告ら加入者は、その運営の一部の作業を被告の指示のもとに被告に従属した立場で行っていたにすぎないというべきである。したがって、本件各契約において原告ら加入者が従事することとされている業務は、ネットショップの実質的な運営主体である被告が、原告らに対して提供する業務であるというべきである。」
「被告は、原告らに対し、本件各契約を締結して、被告が提供するウェブサイト製作、宣伝、プロモーション、商品の仕入れ及び原告ら-の卸売、商品の受注処理及び発送手続等のサービスを利用すれば、原告らは、(a)商品及び販売価格をネットショップに掲載すること、(b)購入者からの質問メールに対応すること、(c)購入者からの入金の管軌、(d)仕入れ代金の支払といった簡単な業務に従事するだけで、容易に商品の販売価格と仕入価格の差額を利益として収受することができる旨をホームページやパンフレットに記載して、本件各契約の締結を誘引したことが認められるから、被告は、原告らに対し、「業務提供利益」である商品販売価格と仕入価格の差額を収受し得ることをもって本件各契約の締結を誘引したものと認めることができる。」
クーリングオフ(58条1項)に基づく原状回復請求として、被告が主張していた損益相殺による控除を認めなかった。
判決全文は
http://shun-you.org/dropwind100323.pdf
に掲載されている。
争点に対する判断の詳細は、原告側の川村哲二弁護団長が執筆した下記ブログをご覧いただきたい。http://stuvwxyz.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-afd9.html
いずれにしても、一時はもてはやされた「ドロップシッピング」という言葉も、いつの間にか過去のものになってしまった。
時代の流れは速い。
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