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2011年4月12日 (火)

「まねきTV事件」最高裁判決の分析 1

この日記で既に報じた「まねきTV事件」最高裁判決

最判平成23年1月18日判時2103号124頁
判決全文については
http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/01/tv-52df.html
参照

について、その内容を、何回かに分けて分析してみたい。

将来、何らかの形で私見や感想を書きたいと思っており、今回は、その前段階にすぎないことに、留意して読んでいただきたい。

本件は、インターネットを介したテレビ番組のロケーションフリーサービスが問題となった事件である。

本件サービスを用いて、テレビ番組という著作物が流されることが侵害となるとして、放送事業者(一審原告=控訴人=上告人)が、ロケーションフリーサービス提供者側(一審被告=被控訴人=被上告人)を訴えたものである。

放送事業者側が侵害に該当するとしたのは、次の2つの権利である。

① 放送についての送信可能化権(著作権法99条の2)
② 放送番組についての公衆送信権(同法23条1項)

最初に、関連条項を整理しておく。

まず、①に関する99条の2(送信可能化権)は、次の条文である。

第九十九条の二 放送事業者は、その放送又はこれを受信して行う有線放送を受信して、その放送を送信可能化する権利を専有する。

こうした「送信可能化」は、公衆送信の一形態である「自動公衆送信」を可能にする行為(自動公衆送信の準備行為)であると考えられている。

上記定義中の「送信可能化」について、定義規定(2条1項9号の5)が置かれている。その定義内容は複雑であるが、自動公衆送信装置の設置、当該装置への情報の記録・入力、及び、当該装置を公衆の用に供されている電気通信回線に接続することが、その要件となっている。

ここに「自動公衆送信装置」とは、「公衆の用に供する電気通信回線に接続することにより、その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分……に記録され、又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置」をいう(同号括弧書)。

さらに、上記定義中の「自動公衆送信」についても、定義規定(2条1項9号の4)が置かれている。その定義内容は、「公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)をいう。」というものである。

ここに登場する「公衆送信」についても、別途、定義規定(2条1項7号の2)が置かれている。次の内容である。

七の二 公衆送信 公衆によつて直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信(電気通信設備で、その一の部分の設置の場所が他の部分の設置の場所と同一の構内(その構内が二以上の者の占有に属している場合には、同一の者の占有に属する区域内)にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。

次に、②に関する23条1項(公衆送信権)は、次のような条文である。

第二十三条 著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあつては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。

同条に登場する各概念に関する定義規定は、既に紹介したとおりである。

さて、本件訴訟に話を戻そう。

本件におけるサービス提供者側の主張は、極めてシンプルである。敢えて分かりやすさのために少し正確性を譲って要約すると、次の内容となる。

本件サービスを用いてテレビ番組を送受信する行為の主体は、サービス提供者ではなく個々のサービス利用者であり、それは「1対1」(当該個別利用者自身)の送受信であるから、同項にいう「公衆」に該当せず、したがってまた、「公衆送信」にも該当しない。そうである以上、「自動公衆送信」にも該当しない。「送信可能化」は「自動公衆送信」を可能にする行為であるから、本件は「送信可能化」にも該当しない。かかる利用者が行う適法行為を、サービス提供者はサポートしているだけであるから、サービス提供者にも侵害は成立しない。

控訴審判決は、次のとおり判示して、サービス提供者側を勝訴させた。おおむねサービス提供者側の主張を認めたものといえよう。

(1) 送信可能化は、自動公衆送信装置の使用を前提とするところ(著作権法2条1項9号の5)、ここにいう自動公衆送信装置とは、公衆(不特定又は多数の者)によって直接受信され得る無線通信又は有線電気通信の送信を行う機能を有する装置でなければならない。各ベースステーションは、あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信するという1対1の送信を行う機能を有するにすぎず、自動公衆送信装置とはいえないのであるから、ベースステーションに本件放送を入力するなどして利用者が本件放送を視聴し得る状態に置くことは、本件放送の送信可能化には当たらず、送信可能化権の侵害は成立しない。

(2) 各ベースステーションは、上記のとおり、自動公衆送信装置ではないから、本件番組を利用者の端末機器に送信することは、自動公衆送信には当たらず、公衆送信権の侵害は成立しない。

これに対し、上告審である本判決は、この控訴審判決を破棄して原審に差し戻した。侵害成立を認めることを前提とする判断である。いわゆる逆転判決である。

次回に続く。

追記

ちなみに、「ロクラクⅡ」「まねきTV事件」の各最高裁判決については、2011年4月14日開催の商事法務ビジネスロースクール「著作権法の最新実務」でもしゃべる予定である。
申込ページ:http://www.shojihomu.co.jp/school.html#_著作権法の最新実務

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