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2011年4月15日 (金)

「まねきTV事件」最高裁判決の分析 3

「まねきTV事件」最高裁判決に対して、さまざまな意見が飛び交っている。ここでは、さしあたり次の点を指摘しておきたい。

まず、ロケーションフリー機器を1台、個人で購入して自宅に設置してアンテナを接続し、ネットを介して出張先からパソコンで見ることは公衆送信権の侵害に該当するか。

 少なくとも本判決の射程外である。というのも、本判決は「当該装置に情報を入力する者が送信の主体である」としている。したがって、上記設例では、自宅に設置した個人が送信の主体となる。厳格に当該個人が自分向けにのみ「11」で送受信して閲覧する限り、「公衆」要件を満たさない。それゆえ、本判決の論理を前提としても、公衆送信とも、送信可能化とも言えないことになろう。日本国内の自宅に設置して、海外赴任している人が、赴任先から見る場合も同様となろう。

次に、クラウドコンピューティングの特定個人向けストレージサーバに録画ファイルをアップロードしておいた人が、これをダウンロードするなどして再生・閲覧する場合はどうか。

まず、「継続的に情報が入力されている場合」に該当するか、疑問がある。本判決は放送用アンテナを「繋ぎっぱなし」にする場合について、「継続的に」に該当するとしたものであるが、それ以外のケースについて、どのような場合が「継続的に情報が入力」といえるか、本判決は踏み込んだ基準を示していない。

さらに本判決は、「自動公衆送信……の主体は、当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であ」るとする。最高裁が、どのような意味で、かかる一般論を述べたのか明らかでない。しかし、この一般論が一人歩きすると、インターネットサービスについて、無制約に「主体」が広がることが危惧される。クラウドに用いる事業者のサーバは、文字どおり「受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態」である。それどころか、プロバイダの共用レンタルサーバ全般が、かかる状態にあるという余地もある。

仮に、それが肯定されれば、送信の主体はクラウド事業者やプロバイダであることになり、契約を結べば誰でも利用できるので「公衆」要件も満たし、クラウド事業者等は、公衆送信の主体となってしまう。そして、送信されるデータが著作物であれば、公衆送信権侵害が成立するおそれがある。本判決に対する評釈の中に、ホスティングのようなクラウド型サービスへの適用を懸念する声があるのは、以上の理由に基づくものであろう。

何も筆者は、最高裁が、そのような趣旨で本判決を言い渡したのだと断定しているわけではない。むしろ、そのような趣旨ではなかったはずであると推測している。ただ、判示された一般論が、余りに広すぎるだけに、そのように理解される余地を残していると言いたいだけである。

前掲「ロクラク事件」最高裁判決は、基準の漠然性ゆえに、侵害の成否を決する範囲が見えてこないという問題が残った。これに対し、「まねきTV事件」最高裁判決は、以上のように判示された一般論が過度に広汎であるがゆえに、問題が残された。

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