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2011年5月 1日 (日)

共同配信記事名誉毀損事件判決-補論

 前回の日記「最判平成23年4月28日-共同配信記事名誉毀損事件」では、共同配信記事名誉毀損事判決の、判例としてカバーする射程は狭いという旨を書いた。その意味について、これを読んだ知人から質問を受けた。そこで、この点について、もう少し論じておきたいと思う。

 本判決は、通信社が配信記事の摘示事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、配信記事を掲載した新聞社は、名誉毀損の責任を負わないとしている。

 しかし、それには限定が付けられており、①「少なくとも通信社と報道主体としての一体性」がある場合だけを対象に、②「特段の事情のない」限りのことであるとしている。

 この限定ゆえに、本判決の射程は狭いと考えられるのである。

 まず、②の関係では、本判決は「当該新聞社が当該配信記事に摘示された事実の真実性に疑いを抱くべき事実があるにもかかわらずこれを漫然と掲載した」というケースを例示している。当該新聞社の追加取材等によって、真実であることを疑うべき事実が判明していたようなケースや、たまたま疑いを抱くような事実を知っていたようなケースが、これに該当することは前回述べた。

 A県を対象とする地方紙の場合には、他県の情報は取材が困難でも、A県それ自体で発生した事件のような場合には、かえって取材は通信社よりも容易であり、追加取材や、読者からの通報によって、詳しい事実関係を知ることができるケースもありうる。

 問題は、①との関係である。

 本件は地方紙のケースであったが、全国紙が通信社から記事の配信を受けて掲載しているケースもある。というのも、全国紙といえども、地方によっては支局を置いていても十分に手が回らないこともある。さらに問題は外国での出来事である。我が国の全国紙といっても、ローカルな国、さらにその首都ではなく地方は取材が不可能か、手薄になるし、速報性が求められることもあるから、通信社の配信を使用せざるを得ない。他方で、このような場合に、当該全国紙と通信社との一体性を認めることは困難である。そこで、本判決は、「少なくとも」という限定を付けている者と推測しうる。つまり、このように一体性がない場合について、本判決は、触れていないと見るべきであろう。

 以上の意味でも、やはり本判決の射程は狭いというほかないのである。

追記

下記を執筆

「共同配信記事名誉毀損事件最高裁判決-「配信サービスの抗弁」との関係」

http://hougakunikki.air-nifty.com/hougakunikki/2011/05/post-72bd.html

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