アップルのiPhone位置情報取得問題
アップルのiPhone位置情報取得問題が、韓国で大きく動いている。
報道によれば、まず、韓国の位置情報保護法違反を理由に、2011年3月、同国放送通信委員会がアップル社に対し行政処分を行った。ユーザーが位置情報サービスをオフにした後にもiPhoneが位置情報を取得していたという。
次に、iPhoneユーザーが自己の位置情報を無断収集されたとして、プライバシー権侵害を理由に、同年4月に韓国の地方裁判所へ損害賠償請求訴訟を提起し、同年6月、支払を命じる判決が言い渡された(CNET)。
さらに、同年8月、韓国のiPhoneユーザー約2万70000人が、プライバシー権侵害を理由に、韓国の昌原地裁に損害賠償を求めて集団訴訟を提起した(朝鮮日報)。
従来型携帯電話においては、通信キャリアが基地局への接続等のために位置情報の取得を行ってきた。これに加えて、スマートフォン等の場合には、別途、アップル社のようなプラットホーム事業者も位置情報を取得して、それに基づいたサービスを提供していることが一般的である。
わが国では、通信キャリアによる位置情報の取得については、個人情報保護法の下で総務省「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン」25条・26条が定めてきた。25条は発信者情報に含まれる位置情報について適用され、それ以外の位置情報については26条が適用される。
ところが、同ガイドラインの適用対象は「電気通信事業」とされているから、通信キャリアには適用されても、プラットホーム事業者には適用されない。しかし、同ガイドライン25条は通信の秘密との関係を考慮して、26条は個人情報保護法との関係を考慮して定められており、プラットホーム事業者に対する関係でも、同様の考慮が求められるはずである。
移動体端末における位置情報をめぐる環境が激変している以上、プラットホーム事業者に対する規制のあり方も、改めて検討が必要となろう。
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