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2011年11月10日 (木)

スマートフォン・セキュリティとスマートフォン・プライバシー

携帯電話の世界が今、急速に変容を遂げている。

これまで接続回線の提供はもちろん、おサイフケータイなどのサービス内容、端末機器の基本規格、コンテンツ課金を含め、基本的な部分はすべて国内の携帯電話会社が主導してきた。

ところが、最近では街角でも電車内でもスマートフォン(スマホ)が盛況だ。こうしたスマホの普及によって、iPhoneの米アップル社と、アンドロイド携帯の米グーグル社が主導権を握る時代へと移行しつつある。

スマホでは両社がそれぞれオペレーティングシステムを中心に基本規格を決定し、それに基づいて端末機器やアプリが製造されて流通する。さらにアップル社の場合、自ら端末機器を設計・製造し、音楽などのコンテンツやアプリの承認・配信・課金のプラットフォームも掌握する。

それによって携帯電話会社を中心とした従来の閉鎖的な垂直統合モデルが崩れた。特にiPhoneの場合、携帯電話会社に残されるのは、既製の端末機器の販売と、接続回線の提供に限られてしまう。しかも、無線LAN接続ができるので、その限度では携帯電話網すらバイパスされる。いまや主役の座が大きく変動しつつあるのだ。

問題はそうしたパラダイムシフトが及ぼす影響だ。

いつでも、どこでも、超小型の高性能パソコンのようなスマホを使って情報を自由にやりとり可能になった点は、利用者にとって喜ばしい。夢として描かれてきたユビキタス通信社会が実現したと言っていい。

その半面、プライバシーやセキュリティへの脅威など、新たに深刻な問題も発生している。パソコンと違ってスマホは常時接続だけでなく、カメラやマイク、そしてGPS機能なども標準搭載している。それを用いてアップル社がiPhone利用者の位置情報を無断で取得していたとして、韓国では集団訴訟が提起された。

位置情報が分かれば、その人が、いつ、どこにいるのか、正確に常時追跡されてしまう。携帯するスマホで政府要人や随行者の現在地が判明すれば、テロの標的になるおそれもある。

さらに、わが国では、マーケティング目的で、多様な端末情報を無断収集できるアプリを、十分な説明なく配布していた企業も登場して問題視されている。

こうした情報が取得されると、本人が知らないうちに「いつ何をしていたか」まで探知されかねない。

しかもアンドロイドではアプリは自由放任が原則だ。これに対してアップル社の場合は統制が効いているのでセキュリティは保ちやすいが、端末のハードウェアやコンテンツ配信、料金などのプラットフォームを握っていることと相俟って、競争法的な問題が発生するおそれがある。

他方、青少年を違法有害情報から遠ざけるため、青少年インターネット環境整備法17条は、携帯電話会社に、青少年有害情報フィルタリング(接続遮断)サービスの提供義務を課しており、これに基づいて携帯電話会社は同サービスを提供してきた。

これはガラパゴス携帯(ガラケー)の世界を念頭に置いている。パソコンと違ってガラケー端末にはフィルタリングソフトをインストールして作動させるだけの能力はない。しかし、ガラケーであればインターネットアクセスをするために、いちど携帯電話網を通らなければならない。そのため、携帯電話会社の設備を用いて青少年有害情報をフィルタリングするサービスを、携帯利用者に提供するというサービスだ。

ところが、無線LAN接続では携帯電話網を通らないので、従来のサービスは迂回されて役立たない。このギャップを埋めるためには、スマホの場合にはパソコンのようなフィルタリングソフトによるほかないが、そのためには現在の青少年インターネット環境整備法を改正するか、検討作業が必要だ。

このように、まさに新たな問題が山積だ。

携帯電話会社を中心とした従来の閉鎖的な垂直統合モデルでは、監督官庁が携帯電話会社に規制を加えれば、関係する末端の事業者に至るまで、それを行き届かせることが、それなりに容易だった。

こうした従来の枠組みが崩れつつある現在、ボーダレスなスマホの世界における利用者保護のための国際的な仕組み作りが新たに求められる時代が訪れていることを、我々は改めて自覚する必要があるはずだ。

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コメント

スマホは動作の信頼性、安全面という点から管理者権限がとれないので、pcのようにアプリ別に管理するのは難しい。やはり携帯電話事業者を中心とした管理が必要でしょうが、なにより青少年インターネット環境整備法の法改正、検討作業が第一ですね。

投稿: niyo777 | 2011年11月12日 (土) 21時36分

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