フィッシング詐欺に対する現行法の状況と立法的対応
平成23年12月8日付け読売新聞によると、警察庁が同日にまとめた不正アクセス対策に関するアンケートの結果によると、フィッシング詐欺が現行法で処罰対象となっていないことについて、95%が「厳罰」「相応の処罰」を与えるべきだと回答したという。
フィッシング詐欺に対する現行法の対応状況は、次のとおりである(拙著『情報セキュリティの法律〔改訂版〕』153頁以下)。
- フィッシング詐欺によって騙し取ったID,パスワードを使って他人になりすまし,ネット経由で無権限者がアクセスしたような場合は,不正アクセス禁止法違反の罪が成立する(東京地裁平成17年9月12日判決・公刊物未登載)。
- 有名企業のウェブサイトを装った本物そっくりの偽サイト(フィッシングサイト)を開設したという点を捉えて,著作権侵害の成立を認めることができる(前掲東京地裁平成17年9月12日判決)。
- フィッシングメールの送信は,「他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものと同一」の「商品等表示を使用」する行為に該当することが多いので,不正競争防止法21 条2 項1号の、不正の目的をもって2条1項1号に掲げる不正競争を行った者に該当するものとして,罰則によって取り締まっていくことが考えられ、フィッシングサイトについても,同様に罰則の対象となるものと考えることができる(総務省「迷惑メールへの対応の在り方に関する研究会中間とりまとめ」)。
今回の警察庁による前記発表は、このようにフィッシング詐欺を正面から未遂段階で処罰対象とする規定が現行法に存在しないことを踏まえたものと思われる。
上記のとおり、それが必ずしも十分でないことを考えると、肯定的に受け取ることができよう。
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