番号法(旧マイナンバー法)
番号法が、2013年5月24日に国会で成立し、同月31日に公布されました。これによって、「社会保障+税分野」を中心に、すべての国民1人ひとりに個人番号が導入されます。住民票を有する在留外国人も対象です。したがって、まさに国民1人ひとりが、この法律を知らなかったでは済まされないことになります。さらに、少なくとも登記されている法人すべてに法人番号も導入されます。これに伴い、関連する数多くの法律規定も、同時に成立した整備法によって一括して改正されています。
本法が、公的部門向けの法律であって、民間部門には関係がないと誤解している人も少なくありません。たしかに、国の行政機関に携わる方々はもとより、地方公共団体の職員の方々にとって重要であることはいうまでもありません。現に本法の正式名称にも「行政手続」という言葉が含まれています。
しかし、主として「社会保障+税分野」との関係で利用されるものであることから、民間部門における税務処理、社会保険関係の事務などに、広く深く関係しています。例えば、企業が従業員に対して源泉徴収事務や社会保険事務に関する諸手続を行う際に、これらの「番号」が必要となります。他方では、官民ともに、漏えい防止などのために、改めて適正な管理体制が問われます。
付番される個人の側からみれば、これによって何が実現されるのか、関連する申請・届出等の手続が、どのように変わるのかという点と同時に、自己の個人情報・プライバシーが十分に保護されているかという点が問われるのです。
このように、国民1人ひとりはもとより、行政部門に携わる方々、企業の経理・人事・法務・労務・情報システム管理などをはじめとする民間部門に属する方々にとっても、極めて影響が大きく、避けて通ることができない重要な法律です。弁護士、税理士、社会保険労務士、行政書士、システム監査関係者の先生方など、それに関連する専門家にとっても同様です。
その一方では、法文を一読されれば誰の目にも明らかなように、残念ながら極めて難解な法律です。個人情報保護に関する一連の法律の特例を定めている規定が、本法の大きな部分を占めています。それだけをみても、多くの特別規定を置いている半面、個人情報保護法等の適用除外や字句の読み替えも多用されており、個人情報保護法制を理解した上で、それらとの関係に留意しなければ、それを正確に解読することが困難です。
ということで、次の著書を緊急リリースしました。
「よくわかる共通番号法入門 ―社会保障・税番号のしくみ」
緊急といっても、最終ゲラ校正を含めると、校正は計5回。じっくり書いた本です。
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